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仕事はそつなくこなすが、「欲」がない若手部下についイラだってしまう……どうすれば?期待の裏返し(3/3 ページ)

彼の仕事ぶりに不満があるわけではないのだが……。

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上司から「部下への期待」を示す

 潜在的な能力を十分に発揮している人と、十分に発揮できていない人で、決定的に違うのが動機づけ、いわゆるモチベーションである。モチベーションが高い人は、自分にできる限りのことをしようと思い、せいいっぱい頑張る。

 もっとできるようになりたいという思いが強く、仕事力の向上を貪欲に追求する。一方、モチベーションが低い人は、最低限必要なことを身につけてしまうと、それ以上できるようになりたいとは思わない。そのため、支障がない範囲内で、「このくらいでいいか」と手を抜いてしまいがちである。欲がないというのは、この後者のようなモチベーションの低い心の状態のことをいう。

 そこを改善するには、モチベーションを高める必要がある。

 モチベーションというのは非認知能力(学力テストなどでは測れない、物事に対する考え方、取り組み姿勢に影響を及ぼす能力)の一種である。非認知能力は、能力の発揮の仕方や開発の仕方を大きく左右する。すでに開花している能力を十分に発揮できるかどうかも、潜在能力を開発できるかどうかも、モチベーションしだいということになる。

 では、モチベーションを高めるにはどうしたらよいのか。

 モチベーションに影響する要因にはさまざまなものがあるが、この上司と部下の人間関係が非常に良好で、信頼関係が築かれていることから、人間関係的な要因を応用することにした。

 アメリカを中心に発展してきたモチベーション理論では、ともすると見過ごされがちだが、日本においては人間関係要因がモチベーションに及ぼす影響は非常に大きい。日米比較研究においても、アメリカ人が自分自身のために頑張るのに対して、日本人は人のために頑張る、つまり人の期待を裏切らないように頑張るといった傾向が強くみられることが分かっている。


期待していることをはっきりと伝える

 親や先生に納得してもらえるように頑張る、あるいは親や先生をガッカリさせないように頑張るというのは、勉強にしろ、部活や習い事にしろ、誰もが子どもの頃に経験したことがあるのではないだろうか。同様に、上司の期待を裏切らないように頑張るというのも、多くの人が経験しているはずだ。

 そこで、この悩める管理職には、部下に対して期待の視線を向けるだけでなく、期待していることがはっきり伝わるような言葉がけを意識するようにアドバイスした。

 本人自身の中にモチベーションが乏しい場合は、そのように人間関係的な要因を用いてモチベーションを刺激する必要がある。ただし、命令口調だったり、義務的に強いたりすると、「やらされる感」がにじみ出てしまい、かえってモチベーションが低下してしまいかねない。刺激の仕方にひと工夫が必要となる。

 例えば「こういうこともできるようになりたい」というような成長目標を本人自身が設定することがない場合は、「こういうこともできるようになってくれるとありがたい」というように期待を示す形で成長目標を設定するのである。

 自ら貪欲に成長を求めるタイプでない場合は、具体的な目標を設定し、それが達成できたらさらに別の目標を設定するといった形で成長を促すのがよいだろう。

 このケースでも、期待を示すことで、単に与えられた職務をこなすだけでなく、自ら計画を立てたり、後輩に仕事を教えたりするようになり、そのための必要に迫られて知識の吸収のための勉強も積極的に取り組むようになった。

「指示通り」ができない人たち

 自分の力量に気付かず、「できる人」のようにふるまって迷惑を掛ける人、取引先に一緒に行っても、まったく違う理解で物事を進めてしまう人、状況の変化に対応できず、すぐにパニックになってしまう人、そもそも「指示通り」に動くことが難しい人……。そういう職場にいる人たちを紹介しながら、その改善策も一緒に考えていく本。

 そういう人たちの深層心理を理解することで、改善策にも近づくことができる。さまざまなケースをもとに、心理学博士の著者と悩める上司の会話で文章を展開。


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