コストコ「年会費値上げ」の衝撃 顧客をつなぎとめるために必要な要素とは?(3/5 ページ)
コストコが年会費を値上げした。サブスク型ビジネスにおいて、なぜ値上げが行われ、どのようなリスクが想定されるのか。そして値上げによる顧客離れを最小限に抑えるためには何が必要なのか…。
値上げによるリスクと5つの収益機会
価格が上がると、当然ながら一定数のユーザーや会員が離脱するリスクが高まる。しかし、サブスク型ビジネスの重要なポイントは「継続課金を基軸としながらも、それだけに依存しているわけではない」という点である。
ビジネスにおける利益を生み出す顧客との主な接点は、以下の五つに整理できる。
1.ライフステージ需要
進学、就職、結婚、出産などのライフイベントに加え、ホームパーティーを開く、旅行に行くといった「ちょっとしたきっかけ」で新たに購入・契約する需要のことである。コストコであれば、大人数が集まるパーティー用の食材の大容量購入や、引っ越し時の生活用品大量買いといった場面で利用されやすい。
2.クロスセリング
ある商品を購入・契約する際に、関連商品やオプションを合わせて提案し、追加で購入させることである。Amazonプライム・ビデオなら「無料コンテンツで囲い込んだうえで、同じ監督の有料レンタル作品も見る」という流れが該当する。
3.アップセリング
より上位のプランや高価格帯の商品に買い替え、買い増しを促すことである。例えばコストコの場合、ゴールドスター会員がエグゼクティブ会員になるパターンや、Netflixで広告なしプランからプレミアムプランへの切り替えなどが挙げられる。
4.アフターマーケティング
購入後のサポートや消耗品の追加販売などにより、顧客から長期的に収益を得る取り組みである。サブスクでは、月額・年額の継続課金がまさにこれにあたる。コストコも会員になった人が定期的に店舗に足を運び、日用品や食品をまとめ買いすることで安定収益を確保している。
5.紹介利益
既存顧客から新規顧客を紹介してもらい、利用者をさらに広げる方法である。コストコの「お友達を連れて買い物に行く」「体験してもらい、その場で入会してもらう」システムや、Amazonプライムのクチコミ拡散などはこの典型例である。
サブスクの場合、多くはアフターマーケティングで継続的な収益を得るが、それだけでは急激なコストアップを吸収できなくなることがある。このタイミングでアフターマーケティング以外の要素を強化することで、値上げによる離反を補う戦略が必要になるのだ。
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