インタビュー
「廃棄される牛」に再び光を 仕入れコスト3分の1で黒毛和牛を提供可能に 社長が語った“苦い記憶”とは(4/5 ページ)
複数回の出産を経験した牛は、低価格なペットフードに加工されるか、廃棄される運命にある……。そうした牛を再肥育して価値を高め、日本の食卓にきちんと届ける取り組みを、北海道の外食チェーンHIR(札幌市)が実施している。
外国人実習生との出会いがもたらした「食品ロス」への強い問題意識
小林氏が「食品ロス」に強い問題意識を持つようになったきっかけは、外国人技能実習生との出会いだった。
小林氏がHIRを事業承継したのは2023年9月末。当時は人手不足により定休日が多く、店舗の稼働率も低迷していたため、前職での人材紹介や採用支援の経験を生かし、人材確保に尽力した。同社では現在、ミャンマー人5人を含む外国人従業員が働いている。彼らの母国での月給は3万円から5万円程度だが、日本では数倍の月給が得られるため、来日を決意した人が多いそうだ。
人材確保に奔走する一方で、飲食店で日常的に発生する大量の食品廃棄に直面し、がくぜんとしたという。食べるものが貴重な環境で育っている外国人技能実習生の彼らも、食品廃棄が日常的に発生する職場に対し、「まだ食べられるものを、なぜ捨てるのか」と疑問を抱いていた。
「彼らにこの現状を見せることに、強い違和感を覚えました」と小林氏は振り返る。これまで外国人材ビジネスに携わってきた身としても「日本で働きたくない」と思われるような環境は絶対に作りたくないと考えた。
そうした思いが、食品ロス削減の取り組みにつながっている。自社のビジネスを外国人従業員の視点で見直し、「廃棄される食材をどう生かすか」という視点を持つようになったこと。その集大成が、現在取り組んでいる再肥育廃用牛の活用なのである。
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