設備の老朽化が進む「ローカル線」は、維持すべき交通システムか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/6 ページ)
いまやほとんどの地方鉄道が瀕死の状態で、補助金無しでは運行を継続できない。まるで点滴で延命する末期患者のようだが、ローカル線という患者はもはや点滴だけでは生きていけない。老朽化した設備の交換が必要だ。このところ、そんな感想を持つ事例がいくつかあった。
富山地方鉄道の場合
富山地方鉄道も、コロナ禍からの回復が遅れている。2023年度の赤字は7億円。このうち2億円は運賃値上げなどで取り戻し、残り5億円は富山県と自治体が支援すると決まった。富山地方鉄道は路面電車が黒字を出しており、不動産業なども黒字。これらの黒字部門で赤字の鉄道部門とバス部門を支える構図となっている。
富山地方鉄道は、鉄道もバスも観光客の収入が多い。鉄道路線のうち立山線は立山黒部アルペンルートの一部だし、本線は宇奈月温泉に達し、そこから黒部峡谷鉄道に連絡する。これがコロナ禍で乗客激減となった。加えて黒部峡谷鉄道は、2024年1月の能登地震の影響で一部区間が不通になってしまい、観光客の回復が遅れる要因になった。バスも鉄道も自社で支えきれなくなっており、補助金額は増加の一途だった。
しかし、富山地方鉄道の営業収入は上向きだ。黒部峡谷鉄道の終点、欅平(けやきだいら)から黒部ダムまで「黒部宇奈月キャニオンルート」の開業も控えている。いまのところは、それまでなんとかしのげば補助金を減額でき、このまま継続できるかもしれない。
ところが、富山地方鉄道にも「設備更新」の壁がある。今後増加するであろう観光客のために、車両の更新や追加などの事業費として、約600億円が必要となる見通しだ。鉄道の再構築事業が国に認められ、国が半分を負担したとしても、残り300億円。県がその半分の150億円、沿線が残り150億円。その負担に耐えられるか。
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