設備の老朽化が進む「ローカル線」は、維持すべき交通システムか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
いまやほとんどの地方鉄道が瀕死の状態で、補助金無しでは運行を継続できない。まるで点滴で延命する末期患者のようだが、ローカル線という患者はもはや点滴だけでは生きていけない。老朽化した設備の交換が必要だ。このところ、そんな感想を持つ事例がいくつかあった。
あらゆるインフラに限界が来ている
2007年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が施行された。これにより、自治体と鉄道会社が再構築計画を策定し、上下分離化によってローカル鉄道を支える仕組みができた。その後も鉄道の存廃論議は続いたけれども、再生される事例のほうが多かった。
しかし、それも経常収支のつじつまを合わせる役目しかない。インフラの限界は近づいている。レールの交換、トンネルの補強、鉄橋も架け替えが必要になるかもしれない。今後、鉄道の利用者が増えるなら投資の価値はあるだろう。しかし鉄道を建設した当時の勢いが、いまそこにあるのか。投資に値する路線であるか、もう一度ふるいにかける時期が来た。
1月28日には、埼玉県八潮市で道路が陥没し、トラックドライバーが巻き込まれた。原因は下水道管の腐食であった。これは八潮市や下水道だけの問題ではない。私たちの暮らしの中で築いてきた建築物などが老朽化し、更新の時期が来ている。鉄道がなんとか維持できている理由は、法律で検査が義務付けられているからだ。それでも設備更新の時期が来る。鉄の固いレールはすり減っていくし、枕木も風雨にさらされて傷んでくる。
そうはいっても、鉄道会社や支援する自治体は、やがて来るインフラ更新の時期などが分かっていたはずではないか。何年後かのその日のために、例えば基金を創設するなど準備期間はあった。それにもかかわらず歴代の担当者たちは問題を先送りした。その結果が現在の窮状につながっている。しかし今さら指摘してもどうにもならない。今後どうするか。これから判断しなくてはいけない。
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