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王者Suicaに挑むタッチ決済、その実態と課題「ポイント経済圏」定点観測(3/5 ページ)

電車などの乗車時に、クレジットカードのタッチ決済が使えるようになる動きが徐々に広がっている。これまで交通系ICカードの分野ではSuicaが圧倒的な存在感を誇っていたが、今後この勢力図はどう変化していくのだろうか。

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MaaS革命の先兵「Pass Case」の登場

 3月13日、MaaS革命の重要な一手として、三井住友カードが総合交通アプリ「Pass Case(パスケース)」を発表し、江ノ島電鉄が導入した。Pass Caseはタッチ決済乗車の認証基盤である「stera transit」を活用したMaaSプラットフォーム上で動くアプリだ。三井住友カードが展開するこのMaaSプラットフォームでは、企画乗車券や定期券、住民割引や往復割などを共通機能として提供する。


stera transitの展開状況。2025年度末には230社の交通事業者での導入が見込まれ、駅数1600駅、バス3500両に拡大予定。全国の駅の70%がタッチ決済に対応する計画だ

三井住友カードが展開するMaaSプラットフォームの概要図。企画乗車券、定期券、住民割など多様な機能を共通提供し、さまざまなアプリから利用可能な構造となっている

 三井住友カードのTransit事業推進部長石塚雅敏氏は「さまざまなアプリに、同じ方法でサービス展開をしていきたい」と説明する。Pass Caseは三井住友カードが展開するショーケース的なアプリとして位置付けられており、自社アプリを持つ交通事業者は、そのアプリからstera transitに接続してMaaSサービスを提供できる。また、自社アプリを持たない事業者はPass Caseを活用することも可能だ。石塚氏は「各事業者の戦略はさまざまで、自社のアプリの接点がメインである事業者もあれば、逆に自社にアプリをそもそも持っていないという事業者もある」とし、各事業者に合わせた展開を支援する。

 この新プラットフォームは、交通DXの中核を担う役割を果たす。これまでのMaaSでは、カードで購入して乗るときは紙券を使う、あるいはカードで購入して乗るときはQRコードで認証するなど、購入と乗車が分断されていた。Pass Caseは、交通チケットをクレジットカードで購入し、そのまま同じカードをタッチして乗車できる仕組みだ。石塚氏は「購入と乗車が一体化することで、お客さまの移動体験がより快適になる」と革新性をアピールする。

 なお、現在はApple PayやGoogle Payによる決済や、スマホをかざすモバイルタッチによる乗車には対応していない。しかし、三井住友カードによれば、これらは2026年3月までに対応予定だという。

 タッチ決済による公共交通機関向けソリューション「stera transit」は、2024年度末には全国約180社、2025年度には230社の交通事業者への導入が見込まれている。現在は月間約350万件の利用があり、すでに183カ国のカードが利用されている。石塚氏は「数年先にはこの350万件が、数億件レベルまで拡大する」と予想する。

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