1足目の喜び 1200円で売れた靴下の価値
「カバンに詰めて東京へ行き、渋谷、新宿、池袋、北千住、豊洲、川崎と回ったものの、どこでもなかなか相手にしてもらえませんでした」と鈴木氏は、次の苦難の道のりを語り始めた。東京の大手雑貨店を訪問しても、資料すら見てもらえなかったという。
「営業経験がなく、飛び込み営業だった私は苦労しました。大手量販店での商談は特に厳しく、30分間の圧迫面接のような状態で、外に出た途端、吐き気と下痢で歩けなくなりました」と振り返る。
東京での営業に行き詰まり、鈴木氏は関西に活路を見いだした。神戸の三宮にある店舗から、知人の紹介で催事販売の機会を得る。「正月休みから来られますか?」と聞かれ、二つ返事で「行きます」と答えた。
「妻と二人で売り場に立ちましたが、販売経験もなく、何を言えばいいのか、何をすればいいのか、全く分からない状態でした」と鈴木氏。そんな中、一人の女性客が1200円する靴下を手に取り、購入してくれた。
「これが初めて米ぬかソックスが売れた瞬間でした。今では累計12万足も売れましたが、その最初の1足、自分が手作りした靴下をお金を出して買ってくれた喜びは、今でも鮮明に覚えています。それに勝るものはないかもしれません」と当時の感動を目を細めて語った。
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