「世代間ギャップ」に悩む前に 若手に信用される上司の、たった一つのシンプルな行動:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/2 ページ)
「世代間ギャップがあり、部下の育成がうまくいかない」「若手の考えが分からない」──昨今、そんな悩みを持つ上司が多い。確かにデジタルネイティブであるZ世代は、昭和を生きたおじさんおばさんには理解しがたいものかもしれない。しかし、若手に信頼される上司がとる行動は意外とシンプルだ。若手社員が上司に「本当に求めているもの」とは?
またもや「世代間ギャップ」に関するデータが公表されました。はい、またもやです。
グロービスが40代の中間管理職1715人を対象に「新たな場における挑戦に伴う不安や課題」に関する実態を調査したところ、新たな場で(新たなプロジェクトに参加、所属組織内で異動、転職など)、「世代間ギャップ」に起因する課題に約9割が直面していたことが分かりました。
具体的には、「若手の育成・教育がうまくいかない」(39.5%)、「世代間で働き方への考え方が異なり、マネジメントが難しい」(36.5%)、「異なる世代間でのコミュニケーションが生まれづらい」(25.3%)などで、「世代間で意見が対立し、意思決定に時間かかる」とした割合も15.9%に上るなど、40代上司の苦悩している状況が浮かび上がる結果になっていたのです。
いつの時代も年配者は、「最近の若い者は……」と嘆いてきましたし、ゆとり世代が社会人になった2010年以降は、「これだからゆとりは……」とぼやく人が増え、「親の育て方が悪い」「チヤホヤしすぎ」と苦言を呈す人もいました。「労働意欲なさすぎ」「いつまで褒め続ければいいのか」といった不満も、散々聞かさました。
しかし、幼い頃からタブレットをシュシュっと操り、SNSを活用したコミュニケーションを日常的に行い、指一本で海を越え、多種多様な国籍の人たちと交わり、環境問題や人権問題を教育されたZ世代は、それまでの世代とは一線を画す「新時代の先頭バッター」です。
「世代間ギャップ」という言葉が、隠している本質
昭和世代にはない彼らの視点から学ぶことは多いし、彼らのフットワークの良さに感動することもあるだけに……、40代管理職は彼らの意見に違和感を覚えても「自分が古いのかも」と内省するしかなく、余計にしんどい。一方で、「世代間ギャップ」という言葉は思考を停止させてしまう側面があります。
「やっぱり世代間ギャップってあるじゃないですか?」「世代間ギャップがあってうまくコミュニケーションできないんですよね〜」「仕事の考え方とか世代間ギャップがありますよね」「家族の捉え方とかでも世代間ギャップがあるし」「個の力を引き出したいんですけど、世代間ギャップがあってうまくいかないんですよね」と言った“現場の悲鳴“を、私は講演会やインタビューなどのありとあらゆる現場で聞いてきました。
全てが「世代間ギャップ」の問題だ、と。しかし、話を深掘りしていくと「それって本当に世代間の問題なのか?」と思うこともしばしば。つまり、「世代間ギャップ」という便利な言葉が、問題の本質を隠してしまっているケースが多分に存在したのです。
もちろん、Z世代に代表される若い「デジタルネイティブ」と、昭和を生きたおじさんおばさんとでは、コミュニケーションの取り方に違いはあります。生まれた時代、育つ時代が違えば、環境も教育も違うので、物事の見方や切り取り方、育まれる感性も異なることでしょう。
でも、人は人。人間の本性は時代で変わるものではない。若かろうと、おじさんおばさんだろうと、Z世代だろうと、誰もが自分を認めてほしいし、自分は「ここにいていんだ」と思いたいのです。そういった人間に宿る基本的な欲求が満たされなければ、成長もしないし、上司の意見に耳を傾けることもないし、ましてや「この会社で、このチームのメンバーと共にがんばろう」という前向きな感情も湧き立ちません。
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