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「世代間ギャップ」に悩む前に 若手に信用される上司の、たった一つのシンプルな行動河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/2 ページ)

「世代間ギャップがあり、部下の育成がうまくいかない」「若手の考えが分からない」──昨今、そんな悩みを持つ上司が多い。確かにデジタルネイティブであるZ世代は、昭和を生きたおじさんおばさんには理解しがたいものかもしれない。しかし、若手に信頼される上司がとる行動は意外とシンプルだ。若手社員が上司に「本当に求めているもの」とは?

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若手の深い悩み──「自分がここに存在する意味は?」

 Z世代を含めた若い会社員たちにインタビューをすると、彼らが気の毒なほどの生きづらさを抱えていることに驚かされます。

 「自分がここに存在する意味」「自分がやっていることの意味」を見いだせず、「私はここにいていいのだろうか」と悩む若者が想像以上に多いのです。


画像提供:ゲッティイメージズ

 厳しい競争に勝って勝って勝ちまくって、やっと大企業の正社員の椅子をゲットしても、「我が社にようこそ!」と歓迎し、 「キミのやりたいことはなんだ? キミの能力を最大限に引き出そう!」と尊重してくれるのは最初だけです。

 入社して半年も経たないうちに一方的に難度の高い仕事を押し付け「ひとつよろしく」とすっかり一人前扱いです。「好きにやってみろ。私が責任とってやるから」と言ってくれる上司でもいれば「よっし。とことんやってみよう!」と思えるのに、そんな男気(女気も)のある人も滅多にいません。

 一昔前ならお客さんや取引先も「おっ、新人さんか!」とちょっとした失敗や気遣いの足りなさも大目に見てくれましたが、今は人と人のつながりが薄れ、ビジネスのみの関係が強まっているので新人だろうとなんだろうと、「こっちはカネ払ってんだ!」と容赦なく怒られたり、会社にクレームが入ったりと、気が滅入ることだらけです。

 本当は上司や先輩に色々と教えてほしいけど、「そんなことも分からないのか」とダメな奴扱いされるのが怖くて聞くこともできない。時折、親分肌で接してくる上司やおせっかいな先輩もいるけど、同年代としか接した経験がないから、どう関わっていいのかも分かりません。

若い社員が上司に「本当に求めているもの」

 彼ら彼女らが求めるのは「あなたは大切な人」というメッセージです。

 周りを見渡す癖=目配りをするだけで、それまで見えてなかったことが見えます。それまで考えてもいなかったことに気づくことができます。そして、上司が具体的に声をかけ、具体的に動くことで、上司と部下という役割の関係が、上司の河合さんと部下の山田さんというような、顔の見える関係に変わります。それは部下にとって「あなたは大切な人」という上司からのメッセージです。

 上司に求められているのは「自分たちとは価値観が違うから(=世代間ギャップ)」という気遣いではなく目配りです。自分の半径3メートル以内のチームメンバーを徹底的に“目配り“する。

 仕事に手間取ってる部下がいたら「どうした?」と声をかける。ポツンと孤立してる部下がいたら「たまには昼食でもどうだ?」とランチに誘ってみる。大量の業務に悪戦苦闘してる部下がいたら「〇〇さん、△△さんの仕事、ちょっとサポートしてあげて」と助け舟を出す。

 そういった具体的な行為が、部下の心を温めます。


画像提供:ゲッティイメージズ

 部下が「自分のことをちゃんと見てくれていたんだ」と思える瞬間を作るだけでいいのです。

 「声をかける」というシンプルな行いは、他者を勇気づけるメッセージになります。若い部下にとって、年の離れた管理職である上司の言葉は上司が思う以上に、うれしいのです。

 冒頭の調査では、新たな場で活動を始めてから6カ月以上が経過したと回答した人に、「(新たな場での活動をスタートした)当時の不安や課題は解消されたか」を聞いたところ、5人に1人(21.9%)が「大部分が解消された」とし、そのうちの半数の人が「部下や同僚に質問・相談しながら解決した」と回答していました。

 これって実にいい解決方法だと思うのです。相談すること自体が「あなたは大切な人」というメッセージになりますし、そもそも人は強さよりも弱さに惹かれるものです。

 若い部下にとって、40代以上の上司は父親に近い年齢です。「こんな人でも悩むのか」「自分と似ているな」と知ることができれば、親近感が湧き、もっとその人の話を聞きたいという気にもなってきます。

 役職が上になればなるほど「失敗したくない」「なめられたくない」と思いがちですが、一歩踏み出してしまえば、意外とうまくいくものです。勇気を出して、半径3メートル以内の部下たちに自分から話しかけてみてください。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。

 新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。


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