SFAの限界──「量」の管理だけではもう足りない? 商談の「質」を管理する新時代のセールステックとは(3/3 ページ)
SFAを活用して商談進捗を確認し、売り上げと行動量を把握することは、もちろん重要だ。しかし、ただ「行動量」を管理するだけで、果たして売り上げ増につながるのだろうか。行動量管理だけでビジネスを拡大するのは不可能ではないかと、筆者は考える。
SFA×DSRで最強の営業組織を目指す
従来、SFAでは顧客の商談進捗をステータスで管理しながら、契約金額をモニタリングしていた。しかし、そこから顧客にどのような提案やコミュニケーションを行なっていくのかは営業個人任せになっていた。
DSRをSFAと併用して使うことで、SFAで商談の進捗を管理しながら、DSRで顧客にどのような提案や情報提供をしているのかを管理するという定性的な営業マネジメントができるようになる。
SFAは営業の定量レポート・ダッシュボードツールのため、定性的な顧客のヒアリング情報や提案内容の管理は不得意としていた。一方、DSRは営業の定量データではなく定性的な提案をデータで管理するツールのため、両者は保管し合える関係にある。
昨今では、定量的な行動量や業績のモニタリングより、定性的な提案内容の営業マネジメントを強化したいというニーズから、SFAではなくDSRを優先して導入する企業も増えている。
DSRは日常の提案業務のデジタル化のため、普段の営業活動を大きく変えることなく自然な形でセールステックとして導入できる。加えて営業体験(顧客から見た時には購買体験)をよくするため、顧客にとっても好反応であり、営業担当のツール活用のモチベーションにつながりやすい。
大手企業だけでなく、地方企業や行政もDSRを導入し始めており、すでに受注率や営業生産性の改善効果が見られている。新たな営業支援ツールとしてDSRは急速に普及していくだろう。
筆者プロフィール:藤島 誓也 株式会社openpage代表取締役
2018年株式会社openpageを設立。顧客取引のDXソリューション「openpage」を提供、米国流のカスタマーサクセスやセールステックについて最先端の情報を国内で広く啓蒙。2024年にはキヤノンマーケティングジャパン株式会社と資本提携を行い、国内大手企業のデジタルセールス戦略推進を支援している。著書に「実践カスタマーサクセス BtoBサービス企業を舞台にした体験ストーリー」(日経BP、2023年)。ITmedia ビジネスオンライン「新時代セールスの教科書」にて連載中。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「代理店が売ってくれない」と嘆く前に パートナー営業で成果を出す方程式とは
多くの日本企業は営業手法に「代理店販売・代理店営業」の方式を採用している。しかし、「パートナーが売ってくれない」「そもそもパートナーにやる気がない」など課題は多い。どうしたらパートナー営業で成果を出せるのか?
「ChatGPT一択」ではない 営業のプロが解説、商談のレベルを底上げする生成AIサービス活用法
営業パーソンの生成AI活用に注目が集まっている。生成AIと聞くと、「ChatGPT」を思い浮かべる方が多いが、生成AIはChatGPT一択ではない。営業が使うべき生成AIサービスは何か、具体的な活用方法について解説する。
「ソリューション営業」はもう古い! これからの時代に求められる「インサイト営業」の有効性
日本では長年、ソリューション営業が正義とされ、課題解決型の営業アプローチが求められてきました。一方昨今米国では、市場動向や顧客状況の力学に迅速に適応し、顧客が自覚をもしていない未知のニーズを解き明かす「インサイト営業(Insight Selling)」が新たな営業スタイルとして注目を集めています。日本で正攻法とされていたソリューション営業は限界を迎えているのです。
優秀な営業マンにあえて「売らせない」 オープンハウス流、強い組織の作り方
案件減らし売上2倍に アドビの最強インサイドセールス部隊は、いかに大口受注を勝ち取るのか
アドビでは、約2年ほど前からBDRを強化している。明確に絞ったターゲット企業からの受注獲得に注力した結果、とあるチームでは≪案件数が半数以上に減少したにもかかわらず、受注金額が倍増≫した。インサイドセールスは「若手の登竜門」として新人が多く配置されるケースが多いが、同社のインサイドセールス組織は一味違うという。
「管理職辞退」は悪いこと? 断る際に重要な2つのポイント
昨今「管理職になりたくない」「管理職にならない方がお得だ」――という意見が多く挙がっている。管理職にならず、現状のポジションを維持したいと考えているビジネスパーソンが増えているが、管理職登用を「辞退」するのは悪いことなのだろうか……?
2年分のアポをたった半年で獲得、なぜ? TOPPANデジタルのインサイドセールス改革
【徹底解説】インサイドセールスの「9割」をAIとツールで完結する方法
AIやセールステック導入の高まりから、最近はインサイドセールスの在り方に変化が起き始めている。筆者は、テクノロジーの進化によってインサイドセールスの業務は9割自動化すると予想している。今後さらにAI活用が進むことが予想される中、人間が担うべき役割はどう変化するのだろうか。

