「また休むの?」子育て社員に“絶対言えない本音”──周囲が苦しむサポート体制から脱せるか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/3 ページ)
人に寄り添った“あたたかい制度”であるはずの「育児休暇制度」。しかし、現状はたくさんの人がしんどい思いをし、不機嫌になっている。こうした中、子育て社員と子育て社員をサポートする社員の「心の壁」を解決しようと、会社側が動き出した。
待ったなしの介護休暇
日本では非正規雇用は「正社員より賃金が低くて当たり前、不安定で当たり前、だって本人が選んだんでしょ?」と、自己責任にする風潮があります。しかし、臨時契約社員に見るスウェーデンの試みには「全ての人が幸せになる権利がある」というメッセージが存在します。
前述したように、育児休暇で雇う臨時契約社員=非正規雇用には、訓練や研修がしっかり行われています。「ミッション完了! ご苦労さまでした!」と放り出すのではなく、「我が社の社員」として次のキャリアにスムーズに移行できるようにサポートしています。
日本の育児休暇や介護休暇は、かなり充実した制度です。2025年度からは「育児・介護休業法」が改正され、育休中の手取りが上がり28日間は休業前と同程度となったり、入園式など子どもの行事でも休めたりするようになりました。
加えて、今後は育児もさることながら、介護と仕事の両立をどうするかが大きな問題になることは明らかです。2019年度の要介護(要支援含む)認定者数は約669万人で、公的介護保険制度がスタートした2000年度の約2.6倍となりました。2025年には日本の人口の2割が後期高齢者=75歳以上となり「2025年問題」と呼ばれています。
企業は若者集めに必死ですから、育児休暇をサポートする制度は急拡大するでしょう。一方、介護休暇はどうでしょうか。取得のしやすさに加え、周りのサポート体制などを徹底する必要があるにもかかわらず、着手している企業はごく一部です。
大人の2人に1人は50代以上ですし、10人に7.6人は40代以上とされています。まごまごしている時間はもうありません。手遅れになる前に、企業の経営者や人事労務担当者は、手遅れになる場画に知恵を絞って、できることから始めてください。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。
新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。
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