「また休むの?」子育て社員に“絶対言えない本音”──周囲が苦しむサポート体制から脱せるか:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/3 ページ)
人に寄り添った“あたたかい制度”であるはずの「育児休暇制度」。しかし、現状はたくさんの人がしんどい思いをし、不機嫌になっている。こうした中、子育て社員と子育て社員をサポートする社員の「心の壁」を解決しようと、会社側が動き出した。
スウェーデンの事例
「育休、有休は全部取得するのが当然の権利」という価値観が根付くスウェーデンでは、育児休業取得によってほかの従業員の負担が増えることを防ぐ施策が整備されています。7割以上の企業が、臨時契約社員を雇うのです。休暇を取得する人と、休暇中の業務を担う人との間で十分な引き継ぎ期間を設け、後任者への訓練や研修などもしっかりと行われています。
契約社員へのフォローも用意されています。企業は、契約社員を正社員に登用する制度を導入。契約社員の次の職場に対して紹介状を書くこともあり、契約社員のキャリアアップ向上にも全面的に協力します。
あたたかい制度を、カネだけで回すのには限界があります。そのため、スウェーデンでは、関わる全ての「働く人」が成長する機会を作れるような、最大限の工夫がされているのです。間違っても、企業のトップが「制度は作った。あとはよろしく!」と現場に丸投げしたり、国が「助成金は出すからあとはよろしく!」と企業に押し付けたりするようなことは起こりません。
日本とスウェーデン、この違いを生み出したのが国のビジョンです。
1960年代、長期にわたって首相を務めていたエランデル氏は「安全、安心、公平、公正な社会を、国民全員が豊かになれる社会を目指そう」と訴えました。手始めとして4.2%の付加価値税を導入。「この負担は、こういった形でみなさんの利益になります」と具体的な政策を示し、その都度「これでいいですか? 増税に賛成してもらえますか?」と賛否を問う作業を、20年ほど繰り返しました。地方にも最大限の権限を与え、行政サービスが提供できる土壌づくりも推進しました。
まず、国の在り方という長期的なビジョンを明確にしました。そして出産、育児、教育、老後など、それぞれのライフステージによって、国民みんなが豊かになるための政策を進めた結果の1つが、育児休暇なのです。
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