2015年7月27日以前の記事
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迷走するトランプ関税 自動車業界で得をするのは誰なのか高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

米トランプ政権の関税政策が世界を振り回している。自動車業界への影響も大きいが、日本メーカーは過去の貿易摩擦問題によって、すでに海外における現地生産が進んでいる状況だ。目まぐるしく方針が変わる関税政策に対して、どのように交渉していくのか。

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米国の国民と企業にも大きなダメージ

 また、関税は製品価格に反映されるため、最終的には米国の関税を負担するのは米国民ということになる。もちろん関税によって価格が上昇すれば消費者に選ばれにくくなってしまうから、日本や欧州の自動車メーカーは利益を削って値上げ幅を縮小しようとするだろう。

 しかし25%もの関税を課せられたら、値上げは避けられないため、米国民の懐も直撃するのだ。これによりインフレが進んで米国経済が悪化すると投資家(ファンドを含む)が判断して株式市場は一気に下落、その後もドル安、株価の乱高下が続いている。

 仮に日本車が現在より20%前後値上がりしたら、米国民はどうするだろうか。別のクルマを選ぶといっても、ドイツ車も韓国車も同じように値上がりする。安かった韓国車は日本車以上に値上げ幅が大きくなりそうだ。

 日本車の現地生産率が引き上げられるだろうか? それも対策の一つではあるが、そもそも労働者が足りず賃金も高い状況では、今以上に生産台数を増やすのも難しそうだ。


マツダは2017年からパートナーとなったトヨタとともにMazda Toyota Manufacturingを2018年に設立。トヨタのRAV4やマツダのCX-50などを生産している(写真:Mazda Toyota Manufacturing, U.S.A., Inc.)

 つまりトランプ大統領が当初唱えていた、現地生産比率を高めるための関税引き上げは机上の空論でしかなく、実効性は薄い。

 しかも米国メーカーのクルマですら、米国内で生産されてはいるが、その多くは組み立て作業だけで、部品の内製率は北米生産の日本車よりも低い。つまり、米国が自動車関税を引き上げると、ダメージを負うのは米国メーカーも同じなのである。

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