生成AIの台頭で「人間の雇用」が逆に増える──LinkedInが指摘する“真の価値”:Social Media Today
ご存じの通り、米LinkedInは生成AIに強い関心を寄せており、アプリ内のあらゆる要素にAIツールを積極的に統合している。
ご存じの通り、米LinkedInは生成AIに強い関心を寄せており、アプリ内のあらゆる要素にAIツールを積極的に統合している。
同時に、同社は会員が生成AIの波に乗り、今後さまざまな業界に大きな影響を与えると見られるこの技術の恩恵を享受できるよう支援しようとしている。
この取り組みは、LinkedInが最新の経済影響レポートで重点的に取り上げているテーマであり、AIの利用拡大や、どの業種・経済圏がAIツールを積極的に導入しているのか、さらに企業がどのようにAIシステムや研修を組み込むべきかについて分析している。
「中小企業」でのAI導入が進めば、経済は大きく変化する
まず、LinkedInはAIへの注力について次のように述べている。
「LinkedInの目標は、労働者・企業・政府がAIを人類の繁栄をもたらす強力な手段として活用できるよう支援することにある。多くの国が成長や競争力の課題に直面する中、生成AIはイノベーションを促進し、成長を加速させる原動力となり得る」
実際、LinkedInによれば、生成AIツールを業務に取り入れている企業の75%が、大幅な時間短縮と平均10%以上の収益増加を実現しているという。
一方で、AIツールの導入は依然として大企業が中心であり、中小企業は取り残されつつある。
「生成AI導入には多くの利点があるにもかかわらず、多くの国で依然として限定的であり、世界経済の中核をなす中小企業が大企業に後れを取っている。中小企業は世界全体の企業の90%以上、労働者の50%を占めており、このギャップを埋めることができれば、経済全体に大きな利益をもたらす可能性がある」
生成AIの台頭 「人間の雇用」は逆に増える?
LinkedInのデータによれば、生成AIから最も大きな恩恵を受けるとみられているのは米国の企業である。これは、AIが企業活動のさまざまな領域でどのように活用されているかに基づく分析結果である。
同社は、生成AIの真の価値は単なる自動化ではなく、新たな機会の創出にあると指摘している。
「生成AIがもたらす最大の機会は、既存業務の生産性向上ではなく、その業務で生まれた時間を使ってイノベーションを促進し、新たな可能性を開くことにある。現在では、70%の企業が創造性や革新のために生成AIを活用しており、自動化(60%)や業務プロセスの簡素化(54%)を上回っている。経営者たちは、テクノロジーと人間の創造力が交差するところにこそ最良のアイデアが生まれると理解しており、生成AIの導入企業の3分の2が人員増強を計画している。このように、適切な投資と視点があれば、生成AIは雇用の純増をもたらす可能性がある」
この点は重要である。なぜなら、多くの労働者はAIによって職を失うのではないかと懸念しているからである。確かに、将来的に自律的に「思考・行動」する高度なAIが登場すればその可能性はあるが、現在のAIはそうした段階には至っておらず、主に人間の業務を補完する役割を果たしているとLinkedInは強調している。
地域別・企業規模別の導入状況
地域別では、インド(62%)と米国(51%)がAI導入率でトップに立っており、以下ドイツ(41%)、イギリス(40%)、フランス(32%)と続いている。
「インドが高い導入率を示しているのは、急速なデジタルトランスフォーメーション、技術に精通した労働力の増加、そしてイノベーションへの強い関心による。一方、米国は高度なテクノロジー基盤と新技術をいち早く取り入れる傾向によってそれに続いている。ヨーロッパ諸国での導入が遅れているのは、規制面の制約や人材不足が要因と考えられる」
特にインドでは、AI人材への需要が供給を上回っており、同国が将来的にAI大国となる可能性が高い。
一方で、地域にかかわらず、中小企業の導入率は大企業に比べて大きく劣っている。この格差を是正することが、LinkedInが今後注力する課題の一つである。
LinkedInは、企業がAIを導入するうえで考慮すべきポイントとして以下を提示している。
- 公共政策による支援
- ワークフローへのAIツールの組み込み
- 従業員による日常業務での試用と習熟の促進
AIツールが教育や職場に広く普及するのは時間の問題だが、LinkedInは「AIの出力に全面的に依存すべきではない」とも警告している。最良の成果を得るには、専門的な知見とAIシステムを組み合わせたアプローチが不可欠である。
このような視点を持てば、生成AIによって業務効率だけでなく、創造性やイノベーションにも大きな前進が期待できるだろう。
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