三井住友銀行が「FA制度」導入 年間「5000件」を超える人事異動はどう変わる?:プロ野球でおなじみ(1/3 ページ)
三井住友銀行は2026年1月から、FA制度を導入する。プロ野球でおなじみのFA制度、三井住友銀行はどのように運用するのか。
三井住友銀行は2026年1月から、人事制度の抜本的な改革に取り組む。
「年功序列」を廃止。これまで同行では、総合職の中で、同期と比較して高い評価を受けた従業員が出世する“総合職至上主義”な考え方があったが、今後はより従業員のスキルセットや専門性を重視し、年齢や性別に関係なく全ての社員が能力を発揮できる環境を作っていく方針だ。
これまでは基本的に、会社から指定された配属先で、目の前の仕事に取り組めば自動的に給与が上がることが多かったが、“黙っているだけでは給与が上がりにくい”仕組みになるのだ。
このような人事制度の大きな改革を控える中で、同行は「異動」の在り方の見直しも進めている。
同行では年間5000件程度の異動が実施されている。これまではそのほとんどを人事が決めてきたが、今後はより社員のキャリア志向を反映できる仕組みを整えたいと、フリーエージェント制度(以下、FA制度)の導入を決めた。
プロ野球などでよく聞くFA制度。三井住友銀行が導入するFA制度にはどんな特徴があるのか、FA制度の導入が新しい人事制度にどのようなメリットをもたらすのか。三井住友銀行の北山剛氏(人事部 副部長)、木下欣生氏(情報統括グループ グループ長)、鮫島隆朗氏(人事戦略第一グループ 部長代理)に話を聞いた。
プロ野球でおなじみの「FA制度」 三井住友銀行の取り組みは?
FA制度と聞くと、多くの人がプロ野球を思い浮かべるかもしれない。
FA制度は、野球選手が所属するチームとの契約に縛られることなく、自らの意志で他チームと交渉、移籍できる仕組み。一定の条件(一軍に登録されていた期間など)を満たした選手にFA権が与えられ、FA権を活用するかどうか(FA宣言するかどうか)は、選手が決められる。FA権があることで選手が市場における自身の価値を把握し、より良い条件での契約を結べるようになるとされている。
三井住友銀行も、新制度の名称は野球のFA制度から取っていると話す。同行のFA制度も、人材獲得を目指す各部署からFA宣言をしている従業員に異動のオファーを送れるというものだ。
細かい仕組みを見ていこう。
まず、同行では従業員が年に1回、自身の業務内容や経験、スキルセット、キャリア志向などを記載する「キャリアシート」を作成している。FA制度ではこのキャリアシートをベースに、これまでの経歴やスキルセットをまとめた「レジュメ」を作成。従業員がFA制度に手を挙げた場合、このレジュメを人事の専用サイトで閲覧できるようにする。
ちなみに、キャリアシートは従業員が入力し、レジュメは生成AIが自動で作成するという。「キャリアシートは従業員が自身のキャリアに向き合うためのものなので、真剣勝負で、本人に書いてもらっています」(北山氏)
受け入れを希望する部署側は自然言語(日常会話で使用する言語、言い回し)でほしい人材の条件を検索する。例えば「人事運用の経験が3年以上。海外勤務経験があるとなお良い」などと検索すると、生成AIがシステム上でキーワードを抽出し、レジュメを検索。条件にマッチする人材が表示されるため、部署側は該当者のレジュメを確認し、希望する人材にオファーする。
オファー後は、カジュアル面談や面接を経て、双方の合意を得た場合、異動を実施する。なお、人事異動の最終決定権は引き続き人事が持つという。
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