ETC障害で大渋滞、それでも「通行料は払って」 高速道路会社の“謎理論”:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
4月、ETCのシステム障害で94万人のドライバーが足止めされる大渋滞が発生。高速道路行政はさまざまな部分で時代に合っておらず、今回の件も、NEXCO中日本が高速料金の後払いを求めているのは不適切。もっと企業イメージを高められるやり方もあったのではないか。
「利用者最優先」の姿勢を示すべき
高速道路で課題を抱えているのはETCだけではない。つい先日もインターチェンジからの誤進入による逆走によって、悲惨な衝突事故が発生した。
標識や看板による注意喚起だけでは逆走防止には限界があることは、以前から指摘されているのだから、ガードレールやポールによる物理的な障害を設けるなど、構造的に誤進入を防ぐ対策を講じるべきだろう。高齢ドライバーの認知機能低下だけでなく、クルマの運転や免許取得がより容易になってしまった弊害が出ているような印象だ。
レベル2の自動運転(運転支援システム)が普及しており、高速道路で利用するドライバーも増えているが、肝心の道路は車線表示のペイントが薄れている箇所も多く、ステアリングアシストの動作が不安定になるケースもある。
今回はETCのシステム障害が原因であったが、スマホの通信障害やアクセス集中によるサーバのダウンなど、通信技術を利用した大規模なサービスはその仕組み上、こうした障害やトラブルが起こり得る。だから、対応マニュアルを作成し、利用者を最優先とする姿勢を示すことが、本来あるべき姿ではないか。
とりわけ高速道路は物理的に人を運ぶことから、安全性が問われるだけでなく、年々変化していく利用環境やドライバーの年齢層分布などに合わせた対策を進めていってほしいものだ。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
高速道路SAPAの「有料化」案 しわ寄せで何が起こるのか
高速道路のサービスエリアとパーキングエリアについて、混雑緩和を目的とした有料化の検討について報じられた。しかし、有料化にはデメリットも多い。駐車スペース拡充や通行料金の見直し、トラックドライバーの地位向上などについても考える必要があるだろう。
「東京湾アクアライン」6車線にすれば“渋滞”は解消するのか 課題は他にある
東京湾アクアラインは、海上の海ほたるPAの人気や千葉県側の観光スポットの充実もあり、週末は深刻な渋滞が発生している。6車線化などの設備改良に加え、ドライバーへの渋滞対策の周知など、多角的な対策が必要だ。
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
便利すぎるクルマは魅力か、それとも退屈か? ソニー・ホンダ「AFEELA 1」が問いかける“クルマの価値”
ソニー・ホンダモビリティの新型「AFEELA 1」が注目されているが、機能やサービスは魅力的なものになるだろうか。運転の簡略化やクルマのソフトウェア化が加速する中で、クルマというモビリティだからこそ実現できる体験を提供していくべきだ。
迷走するトランプ関税 自動車業界で得をするのは誰なのか
米トランプ政権の関税政策が世界を振り回している。自動車業界への影響も大きいが、日本メーカーは過去の貿易摩擦問題によって、すでに海外における現地生産が進んでいる状況だ。目まぐるしく方針が変わる関税政策に対して、どのように交渉していくのか。