2015年7月27日以前の記事
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ETC障害で大渋滞、それでも「通行料は払って」 高速道路会社の“謎理論”高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)

4月、ETCのシステム障害で94万人のドライバーが足止めされる大渋滞が発生。高速道路行政はさまざまな部分で時代に合っておらず、今回の件も、NEXCO中日本が高速料金の後払いを求めているのは不適切。もっと企業イメージを高められるやり方もあったのではないか。

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ETC障害に伴う「料金支払い要求」は残念

 2005年に日本道路公団が分社化、民営化されても、その体質はなかなか変わらないようだ。冒頭のETCシステム障害においても、94万人ものドライバーが迷惑を被ったのに、形だけの謝罪の後に、料金の支払いを求める方針を示すのは、極めて不適切な対応である。

 高速道路の目的は、通行料金を徴収して建設費を償還していくことではなく、ドライバーに安全で快適な移動を提供することであるはず。であれば、ETCがシステム障害を起こしたら、即座に入口を通行止めにし、出口を無料開放して渋滞を解消させるべきだが、こうした不具合発生時の対応マニュアルが存在しなかった。


ETCゲートはかなりの速度域で車載器との交信が可能だが、安全のため低速で通過するように、開閉式のバーの作動を遅らせるなどの対策を採っている。混雑時には料金所で渋滞が発生することもあり、ETCカードの期限切れなどで止まってしまうと後続車が追突してしまうケースもある(写真:AdobeStock)

 件のETCシステム障害による大渋滞で、実質通行止めの最中に路上に寝そべった、中国人女性のSNS投稿は褒められたものではない。だが、それを余裕で行えるほど、動かない渋滞を作ったNEXCO中日本にも責任はあるのではないか。

 そうなると、引き続き料金の支払いを呼びかけていくというNEXCO中日本の対応ぶりが、本当に残念でならない。たとえ数万件の回収ができたとしても、かえって企業イメージを損なう結果となる。

 渋滞は交通集中や交通事故によっても起こるが、それらは利用者側が原因であり、途中のインターチェンジで一般道へとルートを変更することもできる。しかし今回、ETCレーンが動作不能に陥ったのは、NEXCO側が原因であり利用者に落ち度はない。しかも、渋滞が解消しない中、目的地ではない途中のインターチェンジでもETCレーンが開かず、出られない状態が続いたのだ。

 これは完全にNEXCO中日本側の瑕疵(かし)であり、ドライバー側は損害を被っているだけだ。仮に、経営陣の素早い決断と連絡によりETCゲートを開放していれば、94万人のドライバーは同社に感謝して、好意的な印象を与える機会にもなり得たのではないか。

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