「商品ありき」の制度設計では失敗する
制度設計に当たっては、単に年齢などの属性に応じて商品を振り分けるのではなく、資産運用の本質を踏まえたアプローチが求められる。
例えば、高齢者であってもリスク許容度の高い層は一定数存在する一方で、現役世代であっても生活資金の大半を投資に充てることは望ましくない。
必要なのは、年齢や所得といった属性ではなく「どのような目的で・どのくらいの期間・どの程度のリスクを許容できるか」という三軸から投資設計を支援する仕組みの整備ではないだろうか。
プラチナNISAを成功させる対案としては「商品」ありきの制度設計ではなく、「取り崩し」という仕組みをベースとした制度設計である。
既にSBI証券や楽天証券などが実装しているように、「あらかじめ定めた比率や金額に基づいて資産を徐々に取り崩しながら運用する」という自動取り崩しを制度設計に含めたり、一定額を定期的に債券などの低リスクファンドにリバランスするようなシステムをプラチナNISA口座の仕組みとして標準化したりする方がはるかに理にかなっているのではないだろうか。
NISA制度は本来、国民一人一人の資産形成を支援する公的インフラであったはずだ。制度が複雑化するほど、その空白をついて不適切な商品や営業行為が忍び込む余地が生まれる。政府に求められているのは「信頼できる金融商品を責任をもって選定し、長期的な資産形成ニーズを満たす環境づくり」ではないだろうか。
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