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NISAの理念と矛盾? 「毎月分配型」容認で揺らぐ制度の信頼(2/3 ページ)

その設計には、NISA制度本来の理念との齟齬がある。

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「毎月分配型投信」は長期投資に不向き?

 NISA制度本来の理念との齟齬、それは、「毎月分配型の投資信託」を「長期・積み立て・分散」投資を基本としていたNISAの対象に含めようとしている点だ。

 実際、金融庁は同庁作成の資料「早わかりNISAガイドブック」の中で、長期投資は「20年以上の積立で安定した運用益が期待できる」という旨のシミュレーション結果を出している。


1989年以降、毎月同じ金額ずつ国内外の株式と債券に積み立て投資した場合、5年間では元本割れする可能性もあるのに対して、20年間では収益は安定するという試算を出している(出所:金融庁「NISA早わかりガイドブック」)

 しかし20年以上という長期の運用は、高齢者にとっては現実的でないケースもある。運用期間が短くなれば、それだけ元本割れリスクも増えることになる。

 そこで、売却益を軸にした資産形成ではない手段として、毎月分配型投信の解禁が模索されているというわけだ。

「非課税の箔」で社会問題が再燃する恐れも

 しかし、毎月分配型投信には根本的な問題がある。それは、運用益以上に分配金を払うことによって元本を切り崩す「タコ足配当」が起きる可能性があることだ。

 毎月分配型の投資信託は見かけの配当利回りは高いが、それに惑わされ、資産が実質的に減少してしまったら長期的な生活設計をあやうくしてしまう。

 またこうした投資信託は往々にして信託報酬が高く、販売サイドの収益確保の観点から「販売に都合の良い商品」として扱われてきた。こうした批判もあってか、旧NISA制度下では対象から除外されていたのだ。新NISA制度においてはさらに厳しく、成長投資枠においても毎月分配型の投資信託が除外されるほどであった。

 そんな「長期投資に向かない」として排除されてきた毎月分配型投信。それが、あえて高齢者向けのプラチナNISAで復活するのはいかがなものか。

 高齢者の場合、若年層と違って将来の収入で損失を挽回するチャンスは乏しい。その資金が毎月分配型の投信に向けられることは危険ではないか。

 毎月分配型の投信に「非課税の箔」がつくことで、過去に繰り返された証券会社による高齢者への押し売り問題も再燃する懸念もある。

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