本当は怖い五月病 「すぐ辞める人」より「疲れている人」の方が実は危ない:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
ゴールデンウイークが終わり、退職代行サービスを利用する人が増えるとの報道がされています。いわゆる「五月病」です。しかし、実は「やめる決断」ができた人より問題なのは、「疲れている」のに、放置して会社に出社し続ける社員です。
新入社員のメンタルヘルスを左右するもの
そもそも入社後2〜3カ月は、誰でもメンタルが一時的に低下する時期です。専門用語では「リアリティーショック」と呼ばれます。入社前は妄想の世界だった「働く」という行為が実際のものとなり、そのギャップに「こんなはずじゃなかった」とショックを受ける、キャリア初期最初のストレスです。このショック状態にうまく対処できないと、慢性的な職場不適応につながり、仕事への意欲を低下させます。
また、私の分析では、社内のサポート体制が極めて重要なことも確認されています。一般的に、健康診断などは入社直後に行われますが、ゴールデンウイーク後の方が効果的です。本人自身が「私はストレスがたまっている」「メンタルが低下している」かどうかを確認したうえで、保健師や産業医、先輩社員、上司に相談できる体制を整える必要があります。同時に、先輩や上司は新入社員に対し、「最低1日1回声をかける」「仕事に役立つ情報やスキルをこまめに提供する」「目配りを忘れない」などを心掛けることも肝心です。
質のいいサポートを受けた新入社員のメンタルヘルスは、入社後2〜3カ月で一時的に低下しても半年後には回復し、ワークモチベーションの向上が認められています。一方で、サポートが得られなかった社員の半数は、半年以内に離職や休職していました。
企業によっては、ゴールデンウイーク後に配属先に異動になるケースもあるでしょう。その場合は、異動先で社員が仕事をきちんと覚え、居場所が得られるまで先輩社員はフォローする必要があります。
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