本当は怖い五月病 「すぐ辞める人」より「疲れている人」の方が実は危ない:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
ゴールデンウイークが終わり、退職代行サービスを利用する人が増えるとの報道がされています。いわゆる「五月病」です。しかし、実は「やめる決断」ができた人より問題なのは、「疲れている」のに、放置して会社に出社し続ける社員です。
長期休暇が生産性にもたらすプラスの影響
日本の有給休暇取得率の低さは、これまでも問題にされてきました。エクスペディアが2024年に行った世界11地域を対象とした調査によると、日本の有給休暇取得率は63%で、11地域の中で最下位。英国やドイツは93%、フランスは94%など、欧米諸国と比較して日本の取得率が低いことが示されています。
厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査」によると、1人平均の年次有給休暇取得率は62.1%です。過去と比較すると上昇傾向にありますが、依然として低い水準です。
繰り返しになりますが、疲れは借金と同じ。とことん休んで清算する必要があります。長期休暇が生産性に与えるプラスの影響を、経営サイドは見過ごしてはなりません。私がこれまでヒアリングを行った企業の中で、2週間の長期休暇を取り入れたところ、社員の「働きやすい職場感」が高まり、それが生産性の向上につながっていると話してくれた社長さんがいました。
「連続休暇で生産性向上?」と不思議に思うかもしれませんが、だからこその「人」なのです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。
新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。
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