コラム
防衛産業はなぜ“儲かる”ようになったのか? 重工3社に見る変化の本質(3/7 ページ)
防衛関連株が上昇するなか、かつて「もうからない」とされた日本の防衛産業が再評価されつつある。その背景に何があるのか。
利益が出ない事業の代表格だった防衛産業
ただ、実は2020年頃から、すでに日本の防衛産業を取り巻く環境には変化が起きていました。なかでも注目すべきは、日本における防衛装備品の利益率改善の動きです。
これまで「利益が出ない事業」とされてきた防衛産業に対し、日本政府が契約上の運用を見直し、利益が確保できるよう制度変更を進めてきたことが、近年の防衛関連企業の評価を変え、株価を押し上げています。
では、なぜ政府はこの数年で方針を転換し、防衛装備品の利益率を改善する意向を示したのでしょうか。
実は、日本には防衛装備品を扱う企業が多数ありました。しかし、これまでは材料費や人件費、設計変更にともなうコスト上昇が発生しても、防衛省がそのコスト上昇を受け入れることはありませんでした。その結果、企業側がそうしたコストを全て負担せざるを得ない状態となっており、「もうからないが、国防という重要産業であり、企業姿勢という点でやめるわけにもいかない」分野となってしまっていたのです。
実際、日本の某造船企業の方とお話した際、「民間向けの船舶製造は、市況の影響を受けつつも収益を得られていたが、防衛省向けの艦艇は利益がほとんど出なかった」と言っていました。明確な理由は聞けませんでしたが、おそらく前述のように、防衛省がコスト上昇分を負担せず、企業が吸収せざるを得なかった構図が背景にあると考えられます。
ある出来事が、日本の防衛関連企業が縮小・撤退する事態を引き起こしました。
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