コラム
防衛産業はなぜ“儲かる”ようになったのか? 重工3社に見る変化の本質(4/7 ページ)
防衛関連株が上昇するなか、かつて「もうからない」とされた日本の防衛産業が再評価されつつある。その背景に何があるのか。
日本の防衛産業を縮小させた、ある出来事
それが、富士重工業(現SUBARU、以下、富士重工)による戦闘ヘリ「AH-64D(通称アパッチ・ロングボウ)」に関する訴訟です。
富士重工はかつて防衛省の要請を受け、米国製アパッチ・ロングボウの設計図を購入し、2002年から2007年にかけて日本国内での生産を担当していました。当初は62機の調達計画が防衛省側から示されていましたが、富士重工に発注されたのはわずか13機にとどまりました。
1機当たり50億円と言われており、60機なら3000億円を超える大規模な契約規模にもかかわらず、防衛省は富士重工と正式な契約を結ばないまま、いわば“口約束”だけでプロジェクトが進められていたのです。
富士重工は、生産ラインの立ち上げにともなう巨額の初期投資に加え、材料費や人件費、設計変更によるコスト増にも対応せざるを得ませんでした。しかし、防衛省からの追加補償はなく、事実上泣き寝入りを余儀なくされたのです。
こうした動きを問題視した富士重工は、2008年に防衛省を提訴。通常であれば、こうした訴訟は和解によって早期に収束しますが、防衛省側は最後までかたくなに対応を変えず、民間企業の経営リスクに対する理解もほとんど示されませんでした。
結果として最高裁まで争われた訴訟は、富士重工の勝訴に終わりました。そして国は、351億円の全額支払いが命じられたのです。
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