「長期雇用を憎む」経営者 黒字リストラでベテランが去り、最後に笑うのは誰?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
またもやリストラです。しかも、黒字リストラ。コロナ禍前から徐々に増え、アフターコロナを見据えた企業再編で一気に拡大した「今のうちに切っちゃえ的リストラ策」が次々と公表されています。
“終身雇用=長期雇用”は諸悪の根源ではない
これまで多くの企業が「できればお引き取り願いたい」と、希望退職という名のリストラの対象にしてきたのは、技術やスキルを蓄積してきた40代以上のベテラン社員です。日本企業の経営者たちは、ことあるごとに“終身雇用=長期雇用”を諸悪の根源のごとく批判してきました。ところが、その「長期雇用」のおかげで、日本の技術者人気が海外で高まっていることを、日本企業の経営者たちはご存じないのでしょうか。
日本人シニア技術者の人気は10年ほど前から高く、現在も続いています。私がインタビューした人の中にも、中国や台湾の企業に転職したり、起業したりしたエンジニアがいました。彼らはみな、日本の大企業で冷飯を食わされてきたベテラン社員です。
2年ほど前だったと記憶していますが、NHKの報道番組でも紹介されていました。「今までやりたいと思っていてもできなかった開発が全部できる、挑戦できる。非常にありがたいし、実際に本当に楽しいです!」と話す、日本の大手メーカーの元社員だったシニア技術者の笑顔は最高に輝いていました。日本ではめったに見られない、こちらまでうれしくなるような自信に満ちあふれていました。
日本人技術者の最大の価値は、知識と経験の豊かさです。くだんの男性が勤める会社のトップも「40年近く同じ会社に勤めていたので、技術の蓄積が非常に深い」と日本人技術者を高く評価。日本の会社のお偉い人たちが嫌い、日本企業の生産性低下の原因とする長期雇用が、日本人技術者の価値を高め、海外企業の生産性を向上させる“武器”になっているのです。
いつの時代も「創意工夫」が生まれるのは現場です。付加価値は、現場で学び、現場で悩み、現場で熱くなる経験の積み重ねがもたらすご褒美のようなもの。いい現場を作ることが、ものづくりを生業(なりわい)とする企業には不可欠です。それは「人を育て、人生の質を高め、人生に意味を与える現場」です。
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