「長期雇用を憎む」経営者 黒字リストラでベテランが去り、最後に笑うのは誰?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
またもやリストラです。しかも、黒字リストラ。コロナ禍前から徐々に増え、アフターコロナを見据えた企業再編で一気に拡大した「今のうちに切っちゃえ的リストラ策」が次々と公表されています。
「自分の存在」を認めてくれる
さらに、機会の先に「成果に基づく報酬」があることで、組織へのロイヤルティー、コミットメントが高まり、協働する組織が生まれ、生産性向上につながっていくのです。ここでの報酬とは、金銭などの経済的報酬だけではありません。他者からの尊敬などの心理的報酬も含まれます。カネは必要だが、カネだけでは物足りない。「あなたがいるからこそ」「いてくれてありがとう」と、「自分の存在」を認めてくれる報酬が欠かせないのです。
私がインタビューした生き生きと海外で活躍するシニア社員が口をそろえていたのは、「日本では自分の力を発揮する場所がなかった」という嘆きでした。
身を粉にして働き、自分の価値を高める努力をしても、「必要とされている」と感じることができなければ、どんなに事業構造の再構築=リストラクチャリングを行っても結果は出ません。能力発揮できる場を求めてライバル会社に流出する、優秀な社員を増やすだけです。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) など。
新刊『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)発売中。
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