「麻布台ヒルズ」はなぜ批判されるのか? 森ビルが“共感されにくい”理由(5/6 ページ)
「第2六本木ヒルズ」の計画を進めている森ビル。これまでも、都市開発により都市の安全性を高めたり、緑化を強化したりと、大きく貢献しているにも関わらず、なぜか批判の声が目立つ。その理由は何なのか?
全てのものに「意味」を持たせた開発
森ビルの「どことなく嫌われている感じ」は、こうした「全てのものに意味を持たせる」という、都市の作り方に原因があると私は考えている。これが、何となく息苦しさを感じさせるものになっているのだ。
コルビュジェが活躍した20世紀前半は、まだまだ都市は「成長」していく余地があり、それは喜ばしいものだと思われていた。工業も伸びており、科学技術も万能だと信じられていた。しかし、現在はどうだろうか。むしろ過度な「成長」に対する反省が求められているような気がしてならない。
森ビルの資料を見ると、頻繁に出てくるのが「国際競争力の強化」という言葉だ。日本の都市が世界と肩を並べるようになるためには、ビジネスや人口を集約し、国力を伸ばしていくしかないと考えられている。森ビルの都市計画は、グローバル標準に合わせられているのだ。もちろん、都市の成長は必要である。ただ、あまりにも「成長」だけに目が向きすぎていることが、その開発に対するどことない反発を生み出しているのではないだろうか。
また、コルビュジェの都市計画では、人々の憩いの場となるような「公開空地」を作り、そこに「自然」の機能を持たせている。つまり、コルビュジェ流の都市では「自然」もまた、憩いの場所という「意味」を持たされているのである。
しかし、本当の意味での「自然」は、むしろ明確に定義された「意味」などないはずだ。森ビルの緑化には、「意味がありすぎる」のである。緑地はあるのに「緑がない」と批判されるのも、こうしたことが理由だと考えられる。
これは、日本の都市計画制度にもあてはまる。都市開発の制度では、公開空地を作ることで、ビルの高さ制限である「容積率」が緩和される。つまり、公開空地さえ作れば、それだけ高いビルを建てても良いということだ。都心の再開発で作られる公開空地は、それ自体が目的というよりも、むしろ「容積率緩和のための手段」という意味合いも強い。ここにも、「緑があるのに、緑がない」と感じられる原因があるのではないだろうか。
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