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「麻布台ヒルズ」はなぜ批判されるのか? 森ビルが“共感されにくい”理由(6/6 ページ)

「第2六本木ヒルズ」の計画を進めている森ビル。これまでも、都市開発により都市の安全性を高めたり、緑化を強化したりと、大きく貢献しているにも関わらず、なぜか批判の声が目立つ。その理由は何なのか?

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人のための開発はできるのか

 コルビュジェが『輝く都市』を発表して以降、都市論の分野では、彼のような機能主義に対する批判があらゆる角度からなされてきた。シャノン・マターンは『スマートシティはなぜ失敗するのか』(早川書房刊)という書籍の中で、「都市はコンピュータではない」と述べた。コンピュータは各パーツが意味を持っており、まさにコルビュジェ式の都市を具現化したような存在だ。

 最近、都市開発の分野で耳にすることが多くなった「スマートシティ」も、まさにコンピュータのような都市だ。IoTなどを実装し、スマートで合理的で、全てのものが「意味」を持った都市を作る。ただ、シャノン・マターンが同書の中で批判するように、スマートシティとして成功しているところはまだ少ない。

 なぜなら、現実の都市は「意味」だけでは成立しないからだ。不確実で雑多なものを含んだ都市こそが、人間にとってなじみやすいのだと、シャノン・マターンは指摘している。


開発が予定されている六本木五丁目西地区(出典:港区議会の発表資料)

 一連のヒルズには、こうした不確実なものとの出会いがない。確かに、通路は複雑で、散歩していたら思わぬものに出会うかもしれない。しかし、そうした通路でさえも、「迷うための機能」になってしまっている。

 ヒルズはどこか「人間のため」ではなく、人間以外の「成長」や「意味」といったもののための街になっているのかもしれない。こうした、「人間になじみやすい都市から乖離している」という印象が、森ビル批判につながっているのではないか。

著者プロフィール・谷頭和希(たにがしら かずき)

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。


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