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お手軽バーナー「あぶり師」がじわ売れ 縮む市場で“小さな火”が広がった、意外な理由週末に「へえ」な話(3/4 ページ)

焼き目を手軽につけられる家庭用バーナー「あぶり師」が静かなヒットを記録している。売れ筋商品とは言いがたいジャンルで、なぜ販売に成功したのか。その意外な理由に迫る。

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好循環が生まれた背景

 勘のいい読者であれば、「それではダメだ!」とぴーんときたはず。あぶり師の最大の特徴は、食材をあぶることである。商品との相性を考えれば、食品コーナーの近くに並べてもらいたいところだが、先方からの返事は「NO!」ばかり。なぜか。消防法の規制により、炎が出る商品は自由に陳列できない事情があったのだ。

 ただ、喫煙具の近くに並べられてしまうと、消費者から「ライターの新商品かな」と思われてしまう。ライターから遠ざけるために、同社はなにをしたのか。商品にプラスチックのカバーをかぶせたのだ。

 「ん? どういうこと? それがなにか?」などと思われたかもしれないが、通常のライターは決められた場所で販売していることもあって、パッケージなしで扱っていることが多い。いわゆる“裸売り”である。


裸売りではなく、商品にカバーをかぶせた(出典:ライテック、以下同)

 あぶり師もライターと同じように裸売りを考えていたが、ここでも再び、消防法の規制が立ちはだかった。炎が出る商品は他のコーナーでの販売が難しいことが分かってきたので、安全性などを考えてプラスチックのカバーをかぶせることにしたのだ。

 ようやく、タバコやライター売り場以外でも商品を並べてもらえるようになった。日用品コーナーなどで販売することになったものの、売り上げは伸び悩んでいた。それも無理はない。これまでになかった商品を目の前にして「あ、便利かも。こういう商品、欲しかったのよね」といったイメージはなかなかわかない。

 そんなことをしているうちに、あっという間に1年が過ぎようとしていた。しかし、ある日、とあるスーパーから大量の注文が入った。

 なぜ、急に売り上げが伸びたのか。気になって調べてみると、そのスーパーのスタッフがあぶり師を気に入って、自主的に食品売り場の近くで販売していたのだ。この情報はじわじわ広がって、他のスーパーやホームセンターでも同様の動きが見られるようになった。結果、どのようなサイクルが生まれたのか。

 あぶり師の販売場所を変える→売り上げが伸びる→うわさを聞いた他店でも同じ動きが広がる→メディアが取り上げる→それを見た他店で販売場所を変える→売り上げがさらに伸びる……といった好循環が生まれたのだ。

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