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慎重すぎる日本人が抱えるリスク 生成AI時代、なぜ「失敗」が必要なのか(2/3 ページ)

生成AIの登場は、単に業務効率を上げるツール提供にとどまらず、私たちの意思決定プロセスそのものに改革を迫りつつあります。

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意思決定のボトルネックは「人間」?

 しかし、生成AIがいくら”質が高く量も備えた仮説”を投げかけても、それを採用し実行に移すのは最終的に人間です。

 ここに意外なボトルネックが潜んでいます。どんなにAIが優れた提案を出しても、最終的には人間が決裁し、社内外の合意を得ねばなりません。もしこのプロセスが滞り、実行フェーズで人間の合意形成が遅ければ、せっかくの”質が高く量も備えた仮説”が生かされません。

 このボトルネックを解消するために、企業は意思決定プロセスを見直す必要があります。承認階層を減らし、現場の判断で動ける範囲を広げることもその一つです。生成AIが提示する多数の選択肢の中から有望なものを拾い上げ、小さく試す機動力を持つ組織でなければ、せっかくのAIの力も宝の持ち腐れになってしまいます。

「失敗大歓迎」の評価制度へ転換

 AI時代において最も重要な土台は、失敗を許容する組織文化とそれを支える評価制度です。ところが現実には、「新しいことに挑戦して失敗した人」よりも「挑戦せず失敗しなかった人」の方が人事評価が高く給与・賞与も多い──そんな評価軸を持つ企業が少なくありません。このような環境では、いくら経営トップが「チャレンジ精神」を掲げても社員はリスクを避けようとします。生成AIがもたらす恩恵を享受するどころか、かえって既存の殻に閉じこもってしまうでしょう。

 そうならないために、評価制度のアップデートが急務です。従来の成果主義・減点主義的な評価を見直し、最終結果の成否だけでなく、挑戦したプロセスや失敗から得た学びも評価対象に含めることを検討すべきです。失敗を責めるのではなく、「良い失敗」から何を学んだかを重視する姿勢です。例えば、新しい試みに果敢に挑んだ点や、失敗経験を社内で共有し次に生かした事例などを評価項目に盛り込むことが考えられます。そうした制度面の後押しがあれば、社員も安心してチャレンジでき、ひいては組織全体で試行錯誤のスピードが上がるでしょう。

 これらは以前からイノベーションの文脈で語られてきた施策ですが、生成AI時代に入って重要性が飛躍的に高まっています。生成AIが爆発的に生み出すアイデアを生かすには、従来以上に迅速な意思決定と、小さく試して高速で学ぶ組織文化が欠かせません。逆に言えば、失敗を恐れて動けない文化のままでは、せっかくAIが提示する無数のチャンスを取り逃がしてしまうのです。

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