連載
BYDの軽EVは日本で売れるのか 苦戦が予想される“これだけの理由”:高根英幸 「クルマのミライ」(5/6 ページ)
中国のBYDが日本で軽自動車のEVを投入すると話題になっている。しかし、日本で売れるのかは微妙だ。その背景には、モノづくりに対する根本的な考え方の違いがある。品質に対する姿勢が従来と変わらないなら、日本ではあまり受け入れられないだろう。
10%の不良率をどう解決するか――日本人と中国人の違い
電池関係の展示会では、電池本体や性能・品質を評価する技術などだけでなく、製造装置も出展されていた。
電池を生産するための装置の一つ、ローラーのメーカーと、そのローラーで送られるフィルム(セパレーターとして使われるもので、上に活物質を塗布する)の異物を除去する装置のメーカーに話を聞いた。
それによると、ローラーの精度やフィルムの歪みを防ぐノウハウ、フィルム状の異物をエアで飛ばしながら別の部分で再付着を防ぐ除去の仕組みなど、日本のバッテリーの高品質を支える要因の一端が垣間見えた。これらの製造装置は、中国など他国の電池メーカーにも販売されているという。
バッテリー内部のセパレーターとなるフィルムを送る装置の中には、異物を除去する機械が組み込まれる。写真は異物に見立てた黄色い粉末をフィルムに振りかけ、それをどのように除去するかデモしている様子(筆者撮影)
ならば品質の差はどこで生まれるのか。あるメーカーの説明員は「中国のメーカーは不良品率が10%であれば、100個の製品を送る際に、あらかじめ10個の代替品を追加して納品する」のだという。
日本メーカーであれば、不良品率を1%以下にするよう努力し続けるが、中国のメーカーはそうした努力よりも代替品をサービスして、開発のリソースを次世代製品に注ぎ込もうという考えなのだろう。
合理的ではあるが、現時点での製品のユーザーにとっては「壊れたら交換してくれる」よりも「壊れない製品」こそ必要なのだ。同じ製品保証でも、これほどのスタンスの違いがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
中国製EVが「日本市場で好調」と言い張りたい、本当の理由
中国製EVが各国市場に進出し、新たな脅威となっている。しかし、安全性や品質の面で、日本では受け入れられないかもしれない。それでも日本に進出する理由は、日本で販売していることを手柄にして、新興国市場でブランドイメージを高められるからだ。
なぜ軽自動車は選ばれるのか 「軽トラック」がじわじわ広がっている理由
税制優遇があり、装備も充実してきた軽自動車。そもそも国民車構想から誕生したが、安全性や快適性を高めて進化していった。スズキやホンダが高品質な商品をヒットさせた影響も大きい。軽トラックなどは海外でも評価されており、今後も需要が拡大するだろう。
EVは本当に普及するのか? 日産サクラの「誤算」と消費者の「不安」
日産の軽EV、サクラの販売が伸び悩んでいる。EVは充電の利便性に課題があることに加え、リセールバリューの低さが問題だ。ならばPHEVだ、という傾向もあるが、PHEVにも将来的に懸念される弱点がある。EVやPHEVを快適に使うためのシステム整備が求められる。
自動運転は「レベル2」で十分である理由 完全自動運転も“完璧”ではない
中国メーカーの高性能EVで自動運転システムによる死亡事故が発生するなど、高度なシステムでも故障や事故は起こり得る。乗用車であればレベル2の運転支援システムで十分便利だ。ドライバーが運転を管理する方が、安全で確実なシステムになるだろう。
迷走するトランプ関税 自動車業界で得をするのは誰なのか
米トランプ政権の関税政策が世界を振り回している。自動車業界への影響も大きいが、日本メーカーは過去の貿易摩擦問題によって、すでに海外における現地生産が進んでいる状況だ。目まぐるしく方針が変わる関税政策に対して、どのように交渉していくのか。