サイゼの「300円ドリア」はいつまで続く? “デフレの申し子”が直面する試練と選択(1/7 ページ)
外食チェーンが次々と値上げに踏み切る中、サイゼリヤは低価格路線を堅持しています。しかし、原材料費や人件費の高騰により、国内の利益率は低下。安さを維持する戦略に限界はあるのでしょうか。
草刈貴弘氏のコラムについて:
企業を取り巻く環境は、グローバル化やデジタル化、消費者の価値観の変化など、さまざまな要因によって日々変化している。業績の数字だけでなく、その背後にある経営の工夫や市場構造の変化に目を向けることが重要だ。本コラムでは、注目企業の動向を多角的にとらえながら、現代ビジネスの本質や今後のヒントを分かりやすく伝えていく。
外食チェーンが次々と値上げに踏み切る中、価格の据え置きを貫いている「サイゼリヤ」。代表的なメニューである「ミラノ風ドリア」は、1999年に480円から290円へと大胆に値下げし、“デフレの申し子”と呼ばれる存在になりました。2020年7月に300円となりましたが、現在もその価格を維持しています。
外食産業全体が、原材料や人件費の高騰により厳しい経営環境に直面し、市場が低迷する中、サイゼリヤは価格を据え置きながらも堅実に業績を伸ばしてきました。こうした姿勢は多くの消費者から支持を集めてきましたが、その裏では、コメや原材料価格の上昇、人件費の増加、円安といった逆風が重なり、日本国内の営業利益率はかつての7%台から5%を下回る水準に落ち込んでいます。
一方で、アジアやオーストラリアなど海外市場では依然として高い利益率を確保しており、特にアジア圏ではコロナ禍でも2ケタの営業利益率を維持。グローバル事業が、サイゼリヤ全体の収益を支える構造になっています。
サイゼリヤはこの状況下で、どのように価格と利益のバランスを取っていくべきなのでしょうか。今回は、同社のコスト削減の歴史を振り返りながら、今後の価格戦略の選択肢について考察していきます。
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