化粧品ブランド「SHIRO」なぜ人気? 北海道の“開かれた工場”に年間30万人:あの炎上から6年(4/4 ページ)
ブランド誕生16周年を迎えた化粧品ブランド「SHIRO(シロ)」。北海道砂川市にオープンした新施設「みんなの工場」には年間約30万人が来訪、2025年4月にオープンした韓国初進出の店舗は初日に行列ができた。同ブランドを運営するシロ社の福永敬弘社長に事業戦略を聞いた。
国内外の店舗戦略
フレグランスが売れ筋のSHIROにとって、香りを体験できる店舗は欠かせない存在だと言える。国内では都市部を中心に28店舗、海外では台湾、韓国、英国に1店舗ずつ構えている(2025年6月下旬時点)。
海外売上比率は現在約1.5%で、4年後までに19.5%に伸長させる目標を据えている。直近の動きでは、2025年4月26日に韓国初進出としてオープンした「SHIRO Seongsu」(韓国・聖水)が好調だ。初日は行列ができる反響で、2日間で約2500人が来店、約1300人が製品を購入し、約1億ウォン(約1070万円)を売り上げた。
「韓国では、海外初の試みとして現地に即した施策を取り入れた結果、集客や購買につながったと思います。韓国限定の『スズラン』のオードパルファンを販売したほか、スペシャルコンテンツとして『ハーブブレンダーラボ』も提供しています。好きな香りとハーブを選んで、フレグランスミストを作れるものです」
「スズラン」のオードパルファンは2日間で約400本を販売し、2日間の販売記録としては過去最多となった。ハーブブレンダーラボは、約130人が体験した。
「韓国の方の傾向として“消費型”より“体験型”の志向が強く、出店した聖水はラグジュアリーブランドなどがポップアップストアを開くようなエリアです。SHIROを知っていただくための表現として、限定フレグランスやものづくり体験の提供がマッチすると考えました」
国内展開では、2025年3月に「ミナモア広島店」の開業により広島に進出したが、今後は地域初出店の店舗を増やす計画はないとのこと。既存店の移転増床やリニューアルを中心に進めていく方針だ。
直近では、6月26日に「渋谷PARCO店」が新規オープンしたばかり。同店は「廃棄物ゼロ」を目指すSHIROの姿勢を体現した店構えで、燃料としてしか使えない雑多衣類と再生ポリエステルから作った“再生フェルト”をお店の壁や什器にまとわせている。
「店舗づくりでは、2023年にリニューアルオープンした大阪市の『ルクア イーレ店』以降、ゴミゼロの設計としています。『渋谷PARCO店』は、再生フェルトを使ってクリエイティブを追求しました。渋谷PARCOは国内の商業施設で最もグローバル化が進んでいると思います。SHIROが海外展開をするうえで、エントリー店舗のような位置付けになることを期待しています。外国人の方がまず渋谷でSHIROを知って、他国の店舗にも足を運んでいただけたらと」
SHIROは売り上げ追求のためのブランドではなく、上場も目指していないという。「世の中をしあわせにする」を理念に掲げ、2029年までに売り上げを約4.5倍、2038年までに顧客1億人の数字目標を持つ。フレグランス市場は国内外で成長が予測されている。SHIROはグローバルでも広く支持を得られるのか。
著者プロフィール:小林香織
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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