化粧品ブランド「SHIRO」なぜ人気? 北海道の“開かれた工場”に年間30万人:あの炎上から6年(3/4 ページ)
ブランド誕生16周年を迎えた化粧品ブランド「SHIRO(シロ)」。北海道砂川市にオープンした新施設「みんなの工場」には年間約30万人が来訪、2025年4月にオープンした韓国初進出の店舗は初日に行列ができた。同ブランドを運営するシロ社の福永敬弘社長に事業戦略を聞いた。
「みんなの工場」は年間約30万人が来訪
2021年6月には、創業の地・北海道砂川市で、まちづくりプロジェクト「みんなのすながわ」を立ち上げた。2023年4月には、同市に工場と観光要素を併せ持つ施設「みんなの工場」をオープンした。この狙いは、どこにあるのか。
「売上拡大が続くなかで工場の生産能力を拡大する必要性が高まり、既存の砂川市の工場を市内で移転・増設することにしました。一方で、人口減が続く砂川では工場で働く人手の確保さえも難しい状況があり、まちづくりプロジェクトを始めたのです」
プロジェクトの発足から約2年後にオープンした「みんなの工場」は、製品を製造する工場にショップ、カフェ、キッズスペースとラウンジなどを併設。工場はガラス張りで、研究開発や調合など製造工程を見学できる。ショップ内には、複数の香りをブレンドして好みの香りを作れる「ブレンダーラボ」を用意した。
「『みんなの工場』は、設計者やプロジェクトメンバー、砂川市民など、みんなで工場のあり方を考えました。誰も排除せず、みんなに来てほしいという意味もあります。ものづくりの工程を見られるようにしたのは、子どもたちにものづくりの楽しさを感じてもらい、原体験を通じて将来の職業観が形成されたらいいなと思ったからです」
この「開かれた工場」では、研究開発などSHIROにとっての心臓部とも言える工程も見せている。
「工場見学でよくある『一部分だけを見せる』やり方では、ものづくりを仕事にしたいという動機形成にはならないと思います。企業秘密と従業員のプライバシーについては検討しましたが、工程を見せたところで再現は難しいでしょう。また、従業員と向き合って話すなかで、『むしろ、どう見られるとSHIROにとっていいのか』と従業員の視座が変わっていきました」
現在、開業から2年がたち、年間約30万人が来場するまでになった。とはいえ、福永社長が目標とする150万人には程遠い。来場者の4割が道内、6割が道外からとなっている。同施設の売り上げの約6割を占めるのが、砂川本店限定フレグランス「フルーツブーケ」と「ブレンダーラボ」となる。
「ここでしか買えない製品と体験が来訪の一番の動機となっています。ただ、当社の目的は限定製品を売ることではなく、砂川に来て、ものづくりの醍醐味を知っていただくこと。さらに、ここを起点に北海道を巡っていただくことです。アクセスが良くないなかで、より多くの方に訪れていただくには、魅力的なコンテンツを提供し続けることが重要です」
同工場は札幌から函館本線特急に乗って約50分の砂川駅で降り、そこからクルマで約10分の距離にある。砂川駅から無料のシャトルバスを出しているが、函館本線特急は1時間に1本しかなく、不便であることは否めない。来訪者を増やすには、それでも訪れたいと思える要素が求められるという。
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