「まさかウチが関係していたなんて」では遅い 日本企業に迫るフェンタニルの影:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
麻薬のフェンタニルの材料が、中国から日本経由で密輸されていることが報じられた。米国では大きな問題になっており、中国が現代版の「アヘン戦争」を仕掛けているともいわれる。日本企業のビジネスにもリスクを伴う。何に気を付けるべきなのか。
現代版の「アヘン戦争」
フェンタニルについては、以前から米中の間で大きな国際摩擦に発展している。ドナルド・トランプ大統領や習近平国家主席も登場して議論になっており、輸出規制なども厳しく行われてきた。しかし、冒頭で触れたように、輸出の迂回(うかい)地として日本が使われた可能性が指摘されているのである。
米国に渡るフェンタニルは、ほとんどがメキシコやカナダでマフィアが薬物として製造して密輸する。マフィアは、米国内に多数いるフェンタニルを含むオピオイド依存症の人々に対し、路上などで違法に販売して利益を得ている。
そして、フェンタニルの原料や関連物質のほとんどを生産し、供給源となっているのが、中国だ。
今から10年ほど前に、米国でフェンタニルなどの中毒者が問題になり始めた。そして捜査の結果、供給源として中国が浮上。2017年の米中経済安全保障調査委員会の報告書では、中国の規制が緩いことでこうした薬物が製造・輸出されてきたと指摘している。
そして2017年、米国で史上初めて、中国で製造したフェンタニルや類似品を米国に密輸したとして中国人が起訴されている。ただその後も密輸は続いており、中国政府に近い情報源を持つ関係者の証言によると、当時から中国共産党が米国にフェンタニル中毒をまん延させる指示を出していたという。
こうなると、もはや、いわゆる現代版の「アヘン戦争」だといえる。しかも「プロジェクト・ゼロ」という具体的な計画名も報じられている。中国政府筋によると、これはメキシコとカナダを経由してフェンタニルを流通させることで、米国を弱体化させる秘密計画だという。
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