残クレのゴリ押し、ボディコーティング……車ディーラーはどうやって儲けているのか:高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)
自動車ディーラーはどのように収益を確保しているのか。時代とともに、新車・中古車販売や付帯サービスなどの状況が変化している。2025年4月には、“抱き合わせ商法”が問題視された。最近は、高額なボディコーティングが人気で利益率も高いようだ。
中古車とメンテナンスが収益に
そんなクルマの売り方が変わってきたのは、バブルが弾けたことも影響しているのだろう。販売台数が伸び悩み、販売競争が激化したことで、収益構造も変わっていった。
認定中古車は、ドイツ車を中心とした輸入車ディーラーによって広がった。徹底した点検整備を行い、長期保証を付帯することで、従来より魅力的な商品に仕上げたのである。
それ以前からトヨタは中古車販売にも積極的で、ディーラーの中古車販売拠点に力を入れていた。下取りしたクルマを中古車として販売して利益を生むだけでなく、中古車価格を下支えすることを狙ったのである。そもそも信頼性の高さで定評のあったトヨタ車は、ますますリセールバリューを高めていったのだ。そうして中古車が循環していくと、トヨタディーラーの中古車拠点も利益が出るようになっていった。
中古車市場が活性化する一方で、保証制度の充実によって、国産メーカーでもディーラー認定中古車が普及していった。そして輸入車では、認定中古車と同じ考え方を新車に取り入れたメンテナンスサービスが導入されていくのだ。
これは新車購入時に3年間分のメンテナンス費用を前払いすることで、車検まで追加費用がかからないというサービスだ。メルセデス・ベンツはこれを車両価格に組み込んで導入し、一見すると無料サービス(現在は有料オプション)に見えたから飛び付いたオーナーも多かった。
これはユーザーの囲い込みにも効果的で、車検時に買い替えを勧めるにも好都合だった。ドイツ車は新車から5年経過すると故障率が高まる傾向が強く、メンテナンスサービス導入によって安心感を訴求できた上に、コンディションのいい下取り車を確保しやすいというメリットまであったのである。
こうしてドイツ車ディーラーは、早期の乗り換えを促すリピーター(得意客)を日本市場で育て、安定的な利益につなげてきた。
値引きに関しても、ディーラーや時期によってかなり幅があるようになった。ある程度の台数を販売すれば、自動車メーカーやインポーターから販売奨励金が支給されるので、1台1台の利益を削っても、全体で利益を出せるのである。
輸入車ディーラーによっては驚くほどの値引きを提示してくるが、その原資は販売奨励金でまかなわれている。また在庫車両、それも長期在庫となった車両であれば、値引きをしてでも在庫を減らしたいという思惑もある。
値引きに関しては、特に自動車メーカーの資本が入った直営ディーラーよりも、地場資本の民営ディーラーの方が積極的に行う傾向にある。値引きはユーザーの購買欲を直接揺さぶり、最終的に購入を決断させる武器でもあるが、過度な値引きは利益を減らすだけでなく、ブランドイメージの低下につながる。メーカーの直営ディーラーでは抵抗も大きかったのだ。
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