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軽視できない「職場の孤独」 解決のヒントは日本の高度成長期にあった河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

ちょっと前には「若者の孤独」が話題になりましたが、今度は「中高年の孤独」に関心が集まっています。「孤独は別に悪いことじゃない」という意見も聞きますが、深刻な問題を引き起こす孤独もあるのです。

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著者:河合薫

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。


 ちょっと前には「若者の孤独」が話題になりましたが、今度は「中高年の孤独」に関心が集まっています。

 Job総研が実施した「2025年 職場の孤独実態調査」で、全体の約7割が職場で孤独を感じた「経験あり」と回答。年代別には50代が最も多い73.8%で、性別では男性は72.2%に対し、女性が64.0%と男性の方が孤独を感じる傾向が認められたというのです。

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職場で孤独を感じた経験(Job総研のプレスリリースより引用、以下同)
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年代別・男女別の経験有無

 50代といえば役職定年や希望退職の対象になるお年頃ですから、居場所がないというか自分の存在意義を見失いがちです。一方、「若者の孤独」が話題となった野村総合研究所の「孤独・孤立に関する調査」では、全体の4割以上が「孤独を感じる」と回答。20代が44.9%と最も多く、そのうち31.9%が「深刻である(やや深刻とかなり深刻の計)」とし、働き始めての期間別では、入社後5年未満の半数以上が「孤独」を感じていたことが分かっています。

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企業における孤独の実態(野村総合研究所調べ)

「孤独」を軽視してはならない

 「孤独は別に悪いことじゃない」「めんどうくさい人間関係とかない方がいい」――。孤独問題では必ずこういった意見が出ますし、つかの間の孤独感は日常にあふれているので、つい私たちは「それも人生」と受け入れがちです。しかし、「孤独」は「自分で選択する孤独=solitude」と、「寂しい孤独=loneliness」に分けられ、後者は心身をむしばむ極めて深刻なものです。

 自分で選択する孤独=solitudeは「自分の存在」がある状態なので、一抹の寂しさを感じることがあっても「自分だけじゃない。他の人も似たようなものじゃないかな」と考えたり、自分の胸の内をポロっとこぼして「私も同じだよ」などという話を聞いて安堵したり。他者と自分とのつながりを自由に開いたり閉じたり、孤独を楽しんだり、孤独になることで自分と向き合ったり、自分に足りないものを受け入れる時間に充てたりできます。

 一方、寂しい孤独=lonelinessには「自分の存在」がない。いわば「望まない孤独」です。

 周りに人がいても排除されている感じがして、居場所がない。近くに人がいるのに、ぬくもりを感じることができない。自分の存在が全否定されているような気分になり、常に周りと自分の間に目に見えない壁が立ちはだかる。その壁に触れると自分との“違い”に自尊心が傷つきそうで、自分からコミュニケーションを避け、会うことをやめ、物理的に距離を取るようになってゆくのです。

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提供:ゲッティイメージズ

 Job総研の調査では「いつもテレワークだが久しぶりに出社をした。雰囲気に馴染めず、出社の方が孤独を感じると思った」「ベテラン勢だけの独特の集団形成があったため、新人の頃は馴染めずに孤独感を感じることが多かった」とのコメントが自由記述欄に書かれていました。これらはまさに望まない孤独といえるでしょう。

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