「若者の酒離れ」に風穴 サントリー“最古の工場”65億円で刷新、世界一目指す「ジン戦略」の勝算は(3/4 ページ)
ジン市場が5倍に成長する中、サントリーが「ROKU」で世界2位に浮上。大阪工場に55億円を投じ、若者の心をつかむ“次の一手”とは。
カギ握る「大阪工場」を大幅にリニューアル
ROKUを中心にジン攻勢を強めるに当たり、カギを握るのが同グループとして唯一国産ジンの原料酒を製造しているサントリー大阪工場だ。同工場は、サントリーが有する工場の中で最も長い歴史があることでも知られる。前身となる築港工場は、運河に面し水陸の運輸に利便性が高いことから、重要な生産拠点として稼働し続けてきた。
「工場ができた当時は、物品の流通は海運・水運がメインでした。中でも大阪の港は関西で生産している梅やブドウといった、洋酒の原料を調達しやすいことから非常に重要な役割を担い続けてきました。浸漬や蒸溜の施設も整っているだけでなく、瓶詰までワンストップでできるため、現在でも西日本に商品を供給する拠点として、機能しています」(矢野哲次・大阪工場長)
高まる需要を背景に、生産能力を高めるべく、2024年から2025年にかけて多額の投資を実施。まず55億円を投資し、敷地内に「スピリッツ・リキュール工房」を建設した。具体的には、浸漬を行うタンクを8つ新設し、4つの蒸溜釜をリニューアルしており矢野工場長は「ここまでのリニューアルは、長い歴史の中でも初めて」と話す。
「これまでは蒸溜釜の中で浸漬し、その後に蒸溜するサイクルだったので、釜1つにつき1日1回しか蒸溜できませんでした。今回のリニューアルにより、浸漬を蒸溜釜ではなく浸漬タンクで行えるようになり、1日に可能な蒸溜回数は2回に増えています。また、浸漬時の温度調節が容易になり、攪拌もしやすくなっています」(矢野工場長)
その結果、工場全体の生産能力は約2.6倍、ジンの原料酒に関しては2倍に拡大している。この他「パイロットディスティラリー」と呼ぶ、品質研究や技術開発を行う小規模施設も新設し、製造だけでなく新商品の開発も旺盛に行う考えだ。
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