インタビュー
「子どもだから分からなくていい」は間違いだ――やなせたかしが貫いた美術館のあり方(3/5 ページ)
アンパンマンを中心とした作品を複数展示しているやなせたかし記念館は約30年間進化を続けている。そこに息づく“やなせイズム”とは?
「子どもだから分からなくても良い」は違う
ただ、間口を広げるだけでは終わらない。やなせたかし記念館の巧妙さは、来場者の関心度に応じて段階的に深い体験を提供する仕組みにある。
「より関心を持った人が、ハイブローな作品を見られるような工夫をしています。例えば、タブローの作品を『やっぱりすごいな』『きれいだな』と思ってくださったのであれば、詩とメルヘン絵本館にご案内できます。もちろん、アンパンマンミュージアムの中でも多くの絵を展示しています。子どもだましのものではなく、本物の素晴らしさ、芸術性のあるものをきちんと見せたいという思いがあるからです」
この段階的なアプローチは子どもに対しても同様だ。階段の壁など、子どもの目線の高さにさまざまなメッセージが配置されている。
「『子どもだから分からなくても問題ないよね』というのは違うと、やなせ館長はよくおっしゃっていました。現に、子どもたちの行動を見ていると、いろいろな関心を持っていて、それぞれに個性があることが分かります」
実際の来場者の様子を観察した仙波さんの言葉は具体的だ。
「お母さまが、『この作品は難しいからもう出よう』と言っても、子どもは1つの絵の前で立ち止まっていたり、絵本を読み続けていたりします。もしかすると大人は足元のさまざまな展示物に気付かず歩かれているのかもしれませんが、子どもにはそれが届いているなと感じることがあります」
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