伊藤園は“黒歴史”をそっと塗り替えられる? 炭酸コーヒーが広がりにくい背景(4/4 ページ)
伊藤園では、2年越しのリベンジとして、炭酸コーヒー飲料「FIZZPRESSO(フィズプレッソ)」シリーズを発売した。SNSでは「ここ数年でトップクラスにヤバい」と投稿され話題になったが、新製品はどんな点が改良されたのか。伊藤園に聞いたところ……。
SNSで「ヤバい」と話題に
5月26日に一部量販店と自販機で売り出すと、SNSで話題を集めた。「ここ数年でトップクラスにヤバい」とつづられた投稿には、12万の「いいね」がつき、一気に認知が広がった。関連投稿を見る限り、敬遠する人、苦手と感じる人が多いようだ。
「数量が伸びているわけではないのですが、SNSの影響で欠品した自販機もありました。味わいは、本当に賛否両論です。おいしいと評価する方の理由としては、『爽快』『アルコールっぽい』などが多いです。『苦手』という方は、普段から一般的なコーヒー飲料を飲まれているのだろうと予想します。慣れ親しんだコーヒーと比較して『おいしくない』と評価されるのだろうなと。万人をターゲットにしていないので、『どうしても受け入れられない』という方も一定数いると思っています」
これは、あくまで筆者の感想だが、「ビターブラック」は、飲み始めは炭酸特有の“酸味”がコーヒーの味わいとケンカしているように感じられる。飲み進めるうちに慣れてきて、何かの料理と合わせれば、おいしく飲めそうに思えた。比較して、「ライムトニック」はライムソーダに近い味わいで、そのままでも飲みやすい。コーヒー炭酸の入口として飲むなら、やはりこちらだろうと感じた。
「RTDとして発売している炭酸コーヒーは当社製品だけかもしれませんが、競合の飲料メーカーでも、Webサイト上で自社製品を使った『炭酸コーヒーのつくり方』を紹介したり、イベントで炭酸コーヒーを紹介したりしていて、文化としてじわじわ広まっているのかなと。大変ですが、やり続けることが重要で、『炭酸コーヒーが飲みたくなるシーン』をつくれると考えています」
タリーズコーヒーでは、「一杯のコーヒーを通じて、『お客様』、『フェロー』、『社会』に新しい価値を創造し、共に成長する」を経営理念に掲げている。この理念に基づいて、開発を続けていくと宮内氏は話す。
「必ずしも全員に受け入れられなくとも、実際にコアファンがいることは分かっています。そうした方が1人、2人と増えていった先に市場があるという仮説を立てて、開発に取り組んでいます」
宮内氏いわく、現在の国内RTDコーヒー市場は、ピークだった2010年頃と比較して、1000億円ほど低い約8500億円で伸び悩んでいるとのこと。長らくブラックとカフェラテのみが主流で、新市場を開拓したい思いが強いという。だからこそ、「キワモノ」とも言われる炭酸コーヒーにも、果敢にチャレンジしているのだ。この夏、新アレンジとして「炭酸コーヒー」が広まるか。
著者プロフィール:小林香織
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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