ダイニーの「退職勧奨」は法的にどうなのか? 弁護士に聞いた(1/4 ページ)
飲食店の業務効率化支援を手掛けるダイニー(東京都港区)の実施した退職勧奨が、注目を集めている。弁護士に法的にどうなのか聞いた。
佐藤みのり 弁護士
慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。
飲食店の業務効率化支援を手掛けるダイニー(東京都港区)の実施した退職勧奨が、注目を集めている。同社はAI活用で業務効率化が進んだことを理由に、経営は順調であるとしながら退職勧奨を実施。CNET Japanの記事によれば、エンジニアやコーポレート部門の社員を対象に、30〜40人の退職勧奨を進めているという。同社代表取締役の山田真央氏も自身のnoteで、退職勧奨に至った経緯を説明している。
一方、SNSを中心に「法律違反なのでは?」といった声も上がっている。佐藤みのり弁護士に聞いた。
ダイニーの退職勧奨 法的に問題は?
――そもそも退職勧奨とはどういったものなのでしょうか。
佐藤弁護士: 「退職勧奨」とは、企業が退職してもらいたい従業員と話し合い、自主退職を促すことです。退職勧奨は、あくまで従業員との交渉なので、労働法による規制がなく、比較的自由に行えます。ただし、強制的に退職を迫るなど、やり方によっては不法行為(違法なパワハラ)になってしまうこともあるので注意が必要です。
例えば、業務適性に欠ける従業員に対し、3回にわたり退職勧奨した事案で、2回目以降の退職勧奨を違法と判断した裁判例があります。裁判所は、退職勧奨を行うことは、「労働者の任意の意思を尊重し、社会通念上相当と認められる範囲内で行われる限り違法性を有するものではない」と認めています。その上で、説得のための手段、方法が相当な範囲を逸脱するような場合に違法になるとしています。
以上を踏まえ、この事案について、1回目の退職勧奨は、
- 長期間にわたる指導の際の出来事であること
- 威迫的な態様ではないこと
- 退職勧奨を受けた本人が退職について検討している経過もうかがえること
などを踏まえ、社会的相当性を逸脱しておらず、不法行為(違法なパワハラ)とはいえないとしました。
一方、2〜3回目の退職勧奨は、
- 本人が書面で明確に自主退職しない意思を示しているにもかかわらず
- 強く、直接的な表現を用い
- 懲戒免職の可能性を示唆しながら退職を求めており
- 面談時間が長時間に及んでいる
ことも踏まえ、社会的相当性を逸脱した不法行為(違法なパワハラ)と認めています(東京高裁2012年11月29日判決、原審東京地裁2011年10月31日判決)。
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