「健康ミネラルむぎ茶」が過去最高の売上 伊藤園に聞く、麦茶市場が「約2倍」に成長したワケ(1/2 ページ)
伊藤園「健康ミネラルむぎ茶」の7月の販売数量が1億本を突破し、7月単月で過去最高を記録した。麦茶飲料市場の状況を、同社マーケティング本部の黒岡雅康マネジャーに聞いた。
伊藤園「健康ミネラルむぎ茶」の7月の販売数量が1億本を突破し、7月単月で過去最高を記録した。記録的な猛暑が追い風になっていることに加えて、7月14日から同ブランドの新たな施策として、メジャーリーグベースボール(MLB)全30球団をデザインしたボトルを発売していることも追い風になっている。
パッケージには、イメージキャラクターを務めるタレントの笑福亭鶴瓶氏が各球団のユニフォームを着用したイラストをパッケージに採用。消費者には30種類のコレクション性の高い商品として訴求し、ブランドの鮮度と話題性を高める狙いがある。
7月4日に都内で開いた発表会見では、20年以上にわたりCMに出演し続けている笑福亭鶴瓶氏に加え、元メジャーリーガーのムネリンこと川﨑宗則氏、五十嵐亮太氏らも登壇した。鶴瓶氏は「CMキャラクターを26年やってきたことは感慨深い。まさかメジャーリーグ全30球団とコラボできる日が来るとは思わなかった」と驚きを隠さなかった。川﨑氏は「麦茶は毎日飲むし、試合でも必ず持っていく」と話し、五十嵐氏は「(MLBのように)子どもや幅広い世代が野球やスポーツに親しむ入り口になれば」と期待を述べた。
伊藤園では、ペットボトル緑茶飲料の「お〜いお茶」でもMLBコラボを進めている。同社がなぜMLBコラボを実現できたのか。麦茶飲料市場は今どうなっているのか。健康ミネラルむぎ茶のブランディングを担当する伊藤園マーケティング本部の黒岡雅康マネジャーに聞いた。
黒岡雅康 2002年入社。営業としてルートセールスを経験し、2007年よりマーケティング本部に配属。以来「健康ミネラルむぎ茶」ブランドや紅茶飲料の商品企画を担当。現在は、麦茶・紅茶・健康茶ブランドマネジャーとして、緑茶以外の茶系飲料全般を担当している
麦茶飲料市場 10年で約2倍に拡大した理由は?
――麦茶飲料の売り上げ推移について教えてください。
ペットボトル麦茶の売り上げは年々伸び続けています。おおよそ10年前と比べると2倍の規模にまで市場が拡大しており、市場全体としても非常に力強い成長が続いています。
――2倍もの成長要因は何なのでしょうか。
最大の転機は2011年の東日本大震災でした。それまで麦茶のペットボトルは市場規模が非常に小さく、家庭では主にティーバッグで「自分で作る飲み物」というイメージが強かったと思います。しかし震災をきっかけに、ものの供給が難しくなり、水や麦茶など誰もが安心して飲めるペットボトル飲料への需要が一気に高まりました。そこから各家庭で大型ペットボトルの麦茶を常備する光景が増えていきました。
その後も計画停電や電力不足が続き、エアコンが使えない夏が続きました。そうした中で、熱中症対策への意識が一気に高まり、「水分補給にはカフェインの入っていない飲み物が適している」という情報が広まりました。熱中症の定義や対策が制度的に整備されたこともあり、メディアでも水分補給、特に麦茶のようなノンカフェイン飲料の重要性が強調されるようになりました。
その後、日本の気候も徐々に高温化し、毎年のように熱中症リスクが話題になることで、麦茶の需要も年々高まっています。こうした社会環境の変化が、麦茶ペットボトル市場の急成長の原動力になったと考えています。
――650ミリリットルという大容量も支持を集めています。麦茶ならではの魅力についてお聞かせください。
麦茶の最大の魅力は、やはり「ごくごく飲める」という点だと思っています。カフェインが入っていないので、安心して量を気にせず飲めますし、夏の暑い時期には水分補給としてたっぷり飲める需要があります。もちろん安心・安全という面も大きいですが、他の無糖茶、例えば水や緑茶、ジャスミン茶は「味わって飲む」印象が強い一方で、麦茶は本当にがぶがぶと喉を潤しながら飲める。そこが他の飲料との一番大きな違いであり、麦茶ならではの魅力だと考えています。
伊藤園の無糖茶“2本柱”へ
――伊藤園のラインアップの中で、麦茶はどのような位置付けですか。
伊藤園では、麦茶も非常に重要な存在だと考えています。もちろん日本のお茶文化を代表する緑茶は柱の一つですが、実は麦茶も古くから家庭の味として日本文化に根差してきた飲み物です。私は「緑茶」と「麦茶」が、日本を代表する無糖茶飲料の2本柱だと思っています。この両方をしっかりと育てていき、もっと多くの方々に飲んでいただきたいという思いを常に持っています。
――伊藤園では、これまでスポーツシーンでの麦茶の活用にどのように取り組んできましたか。
もともと海外への直接的な展開があったわけではありませんが、国内ではスポーツシーンへの取り組みを強化してきました。東洋大学陸上競技部へのスポンサードや、アーバンスポーツ領域でスケートボードの西矢椛選手への支援、車いすラグビーなど、多様なスポーツ分野で麦茶の価値を伝えてきました。
年々、スポーツ現場で麦茶が選ばれる機会が着実に増えている実感があります。今回MLBとの連携に踏み切ったのは、夏の暑さ対策・水分補給という麦茶本来のメリットを、よりスポーツシーンで提案していきたいという思いからです。
――これまで大規模にスポーツと結びつけた施策はありましたか。
今までは大学などへの小規模なサポートが中心でしたので、今回のように大々的にスポーツリーグとコラボしたのは初めての取り組みです。
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