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店舗ごとに価格も量も変える 40年続く八丈島料理の居酒屋、都内展開の戦略(2/2 ページ)

コロナ禍が明け、現在の外食産業の課題は何か。郷土料理を専門とする強みについて、八丈島料理の居酒屋を展開している源八船頭の牧田雄成取締役に聞いた。

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店舗ごとに価格や量を調整 理由は?

――八丈島の料理やお寿司の魅力についてどう感じていますか。

 島寿司はとても人気があり、9割の来店客が注文します。さらに8割の方が明日葉の天ぷらを頼みます。八丈島の島寿司は、特製の醤油タレに漬け込んだ魚に甘めの酢飯を合わせていることが特徴です。また明日葉も苦味と香りが特徴で天ぷら以外にもさまざまな料理に合います。小岩の顧客にも、この八丈島の味がしっかりと浸透していると感じています。


明日葉の天ぷら

――長く愛される店づくりに大切なことは何でしょうか。

 やはりいろいろな要素がありますが、一番は顧客とのしっかりしたコミュニケーションだと思います。例えば、お爺さん・お父さん・息子さんと三世代で通っていただくような家庭がいて、その息子さんを、私は19歳の頃から知っています。今は24歳になって友達を連れてきてくれるようになりました。誰が来ても、世代が変わっても「自分の居場所」と思えるようなお店づくり、顧客との関係性づくりを、スタッフと一緒に大事にしていきたいと考えています。

――今、居酒屋業界が抱える課題についてどう考えていますか。

 居酒屋業界でよく言われるのは人手不足です。最近は物価の高騰も大きな課題で、その影響で商品の値段設定がとても難しくなっています。実際、原材料や光熱費、人件費も年々上がっており、価格にどこまで反映できるかが悩ましいところです。

――店舗ごとに価格や量を調整しているとのことですが、その理由は何なのでしょうか。

 例えば小岩高架下店や湯島店などは、少人数のお客さまが多い傾向があるので、量を半分にして価格も下げています。そうすることで、一人で気軽に何度も通いやすいようにしています。客単価も3600円から3800円程度に抑える工夫をしています。

立地やターゲット層に合わせて変える戦略

――業界全体として値上げのハードルについてはどう考えていますか。

 原材料や人件費は確実に上がっており、毎年最低賃金も上がるので、それに合わせた価格帯で挑戦しなければならない状況があります。海外に行くと、日本の外食は本当にコストパフォーマンスが高いと感じます。しかし、その分利用者の期待も高いため、単に安さだけを追求するのではなく、地域や顧客に合わせたメニューや価格設定にしっかり取り組みたいと思っています。

――原価率や利益についてどのように考えていますか。

 当店の原価率は30%を超えることも多く、利益を出すのは簡単ではありません。特に魚介類など原材料費が高い料理を使うと、原価率はすぐに上がります。もちろん経営として無理な値付けはしませんが、おいしさやボリューム、品質でお客さまに納得いただけるよう努力しています。

――安売り競争ではない立地や客層に合わせた経営スタイルを貫いているのですね。

 立地やターゲット層に合わせて、湯島店や船橋店など各店で違う戦略をとっています。安いだけのお店ではありませんが、週に一度や月に数回は気軽に立ち寄れるような、地域に愛される居酒屋でありたいと考えています。

――競合となる八丈島料理店は、都内にどの程度あるのでしょうか。

 都内で八丈島料理を看板に掲げている店は4店舗程度しかありません。そういった意味で、都内で複数店舗展開し、八丈島料理で統一したブランディングをしているのは私たちの強みだと考えています。

――八丈島の料理を通じて感じる面白さや強みは何でしょうか。

 八丈島料理をきっかけに、さまざまな方とご縁が広がるのがとても面白い点です。八丈島にルーツを持つ方と話したり、島の歴史や文化を伝えたりできるのもやりがいがあります。

現地調達と食文化継承による八丈島ブランド戦略

――長く続く店の条件や、40年という歴史についてどうお考えですか。

 40年続いているのは、本当にすごいことだと思います。小岩本店をはじめ長く支持される理由は、やはり島寿司をはじめとした八丈島料理の唯一無二の魅力だと考えています。島寿司は一度食べるとクセになる味わいで、「またあのお寿司が食べたい」と思っていただけることが多いです。「ここでしか味わえない」と思っていただける存在になっているのだと思います。

 また、世代を超えて常連顧客に愛されていることも持続の大きな要因です。お年寄りから若い方まで幅広い層にご利用いただき、家族や友人と何度も訪れたくなるような場所を目指してきました。こういった積み重ねが、40年もの長きにわたる営業につながっているのだと実感しています。

――今後の展望についてお聞かせください。

 私たちが目指せる規模は「10店舗が限界」だと思っています。それはスタッフとの距離感を大事にしたいからです。スタッフに「この会社で働いてよかった」と思ってもらえるお店でありたいですし、その空気はきっとお客さまにも伝わると信じています。

 「スタッフを何より大切にする」ことを会長から受け継いだので、今もそこを守りぬいています。忘年会など全店舗のスタッフが集まって交流できる規模感を維持したいという思いもあります。

 また、将来に向けては独立支援制度も整備し、長く働いてくれたスタッフが自分の店を持てるような仕組みづくりや、60代、70代になっても朝の仕込み作業などライフスタイルに合わせて活躍できる環境の整備も進めています。

――八丈島料理という文化の今後の普及や展望についてはどのように考えていますか。

 現在は八丈島の漁師と直接やりとりをして、仕入れにもこだわっています。例えば、島から魚を直送してもらうことで、少しでも現地の漁業に貢献したいと考え、たとえコストが高くなっても「八丈島らしさ」を守っています。同じ食材でも、他所で購入した方が安い場合もありますが、あえて八丈島産にこだわることで、食文化や地域経済の活性化につなげていきたいと考えています。


八丈島の島寿司

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