「世の中の文字は小さすぎて、読めない!」 800万人が直面する“老眼問題”と働き方の落とし穴:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
高齢化が進む日本では、2040年ごろに約半分の人が老眼になる見込みだが「老眼鏡をかけたくない」人も多く、生産性の低下が懸念される。そんな問題を解決には……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
本連載では、私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」をひも解いていきたい。
「世の中の文字は小さすぎて、読めない!」
俳優の渡辺謙さんがそんなふうにキレ気味に声を張り上げ、資料の束を頭上に放り投げる――というインパクト大のCMを覚えているだろうか。
2018年ごろに放映された眼鏡型拡大鏡「ハズキルーペ」のCMだが、実は今、ビジネスシーンで渡辺謙さんのようにキレて資料を放り投げたい衝動にかられる人が急激に増えている。
日本の人口動態の中で際立って多い「団塊ジュニア」世代で、本格的に老眼が進行しているからだ。
ご存じのように、団塊ジュニアとは1971(昭和46)〜74(昭和49)年という戦後のベビーブーマーの子ども世代で、2025年現在の年齢は50〜54歳。およそ800万人いる。
メガネスーパーによれば、老眼は40代で始まるとされるが、この年代はまだ資料や本を目から約33〜43センチ離すと読める。しかし、50代になると目から60センチ離さないと読めない。つまり、50代前半というのは体を後ろにのけぞらせたくらいでは文字が読めなくなる「本格的な老眼ライフ」がスタートするタイミングなのだ。
しかも、50代前半は多くの人が職場で完全にベテラン扱いされ、管理職や若手の育成に関わっている。「責任ある立場」なので、部下や後輩の作成した資料、メールでの報告など、膨大なドキュメントに目を通さなくてはいけない。
老眼が進んだ50代にとって、これはかなり過酷な負担である。
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