3万円でも売れるのはなぜ? 過熱する「ストレートヘア」市場の裏側(4/4 ページ)
ツヤのあるストレートヘアへ導く、高額のヘアアイロンや縮毛矯正が人気を集めている。なぜ「ストレートヘア」市場が過熱しているのか。
なぜ高額でも売れるのか
なぜ、これほど市場が盛り上がっているのか。取材を通じて見えてきたのは、「ヘアスタイルの多様化」や「髪に対する美意識の向上」だ。
sinsコスメティクス社の日野社長によれば、近年はハイライト(髪を部分的に明るく染めるデザインカラー)や韓国で流行しているレイヤー(髪に段差をつけるカット技術)など髪型の幅が広がっている。同時に美髪ニーズも高まっているが、技術を進化させなければ顧客満足度を上げられないという。
「高額な酸性ストレートの導入が増えている背景には、アルカリ性の縮毛矯正ではデザインヘアーに対応できないという側面もあります。自身がカットやカラーを手がけたお客さまに対して、そのデザインを生かす縮毛矯正も提供できれば、客単価も顧客満足度も上がるはずです」(日野社長)
髪に対する美意識の向上も目覚ましい。MTG BEAUTECH事業本部 マーケティング1部 1課 山野彩佳氏は、ヘアケアカテゴリーの盛り上がりに触れた。
「当社のヘアケアカテゴリーは、中価格帯の製品(ドライヤーなら4万円前後)を扱っていて、四半期ごとに2桁成長を続けています。当社ではシャワーヘッドや美容機器、スキンケアなど幅広い商材を扱っていますが、ヘアケアカテゴリーが全社の業績を牽引しています」(山野氏)
同事業本部 商品企画責任者 藤田桃代氏は、次のように語る。
「当社では、全製品共通のコンセプトとして『テクノロジーでプロの技を再現する』を掲げています。ドライヤーやヘアアイロンは20社以上のトップサロンと共同開発しており、言語化しづらい美容師さんの手や指先の感覚まで製品に反映しています。そうした独自戦略により強いうねりも伸ばせるストレートアイロンを新発売し、売上増につながっていると考えています」(MTG BEAUTECH事業本部 商品企画責任者 藤田桃代氏)
パナソニックでも、高機能のヘアケア製品全般が伸びているという。
「2022年9月に発売した高浸透ナノイー搭載の『ドライヤー ナノケア EH-NA0J』(希望小売価格3万3660円)は、ナノケアシリーズで最も売れた機種となっています。そうした実績があり、ヘアアイロンでも高浸透ナノイー搭載の新製品を発売しました。ハイトーンカラーをしている方やうねりが強い方でも、しっとりまとまりの良い仕上がりになる点が魅力としてササっているのは調査でも見えています」(高橋氏)
近年は、シミ取り、たるみケアなどのレーザー治療や二重まぶた手術といった美容医療の人気が増しているが、それと似た感覚で、ヘアケアへの支出を惜しまないのかもしれないと日野社長は語った。東京商工リサーチによれば、「美容医療」市場は2022〜24年の3年間で約1.5倍に拡大し、以前よりも身近になっている。
高まり続ける美しい髪への需要。各社の動きを見る限り、さらなる市場の盛り上がりが予想される。
著者プロフィール:小林香織
1981年生まれ。フリーランスライター・PRとして、「ビジネストレンド」「国内外のイノベーション」「海外文化」を追う。一般社団法人 日本デジタルライターズ協会会員。エンタメ業界で約10年の勤務後、自由なライフスタイルに憧れ、2016年にOLからフリーライターへ転身。その後、東南アジアへの短期移住や2020年〜約2年間の北欧移住(デンマーク・フィンランド)を経験。現地でもイノベーション、文化、教育を取材・執筆する。2022年3月〜は東京拠点。
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