なぜ、UCCは「食べるコーヒー」を開発したのか 研究者「豆を丸ごと食べたい」(2/4 ページ)
UCCの食べるコーヒー「YOINED」は、コーヒー豆を丸ごと使った新しいスタイルの商品。発売初年度から話題となり、翌年は販売数が1.5倍に。飲むコーヒーとは違う香りと味わいが楽しめることから、幅広い層に支持されている。
原点は「コーヒー豆を全部食べたい」
YOINEDの開発は、研究員の「コーヒー豆を丸ごと食べることはできないのか」という素朴な疑問がきっかけだった。通常、コーヒーは、豆から湯や水で抽出して楽しむ。豆の抽出液であるため、いわば“薄まった”ものを飲んでいるともいえる。
さらに、香りも豆を挽(ひ)いた瞬間からどんどん劣化してしまう。挽いた直後が最も香り高いため、それを持続させられないかという問題意識があった。
UCCのコーヒー研究開発施設「イノベーションセンター」は、20年前からこの問題意識を受け継いできた。そして技術の進歩に合わせて、多様なアイデアを蓄積してきた。
YOINEDを生み出すヒントとなったのは、チョコレートの製造工程だ。カカオ豆とコーヒー豆は、硬さや産地、独特の香りなど共通点が多い。「カカオをコーヒー豆に変えたらどうなるのか」という発想につながり、コーヒー豆を抽出するのではなく、丸ごと粉砕して香りとともに閉じ込める独自製法を確立した。
しかし、コーヒー豆は油脂を多く含み、硬い。通常の粉砕では細かくできず、口の中でざらつきが生じる。さらに、挽く際に熱がかかるため、酸化や空気との接触によって香りが失われる問題もあった。
これらの課題を解決したのが、マイナス196度での凍結粉砕だ。凍結しながら粉砕することで、コーヒー豆をより細かく滑らかにし、香りの損失も防いだ。焙煎豆の約15%を占めるコーヒーオイルと植物油脂、砂糖などと混ぜ合わせて成型する製法技術で、2021年3月に特許を取得した。
「コーヒー豆を抽出せずに丸ごと使っているからこそ、味と香りが濃い」と小坂さんは語る。同社の調べによると、豆をそのまま使用する製法により、YOINEDは飲むコーヒーより食物繊維が約6倍多く、カフェインは約5分の1に抑えられているという。
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