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2兆円消失の「ラブブ」運営会社 ライバルの猛追許したIPブランドの死角とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)

大人気キャラクター「ラブブ」を展開するポップマート。株価の下落が大きく報じられているが……?

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それでも「ラブブ」は終わらない

 しかし、株価が調整局面を迎えただけで、ポップマートが経営危機に見舞われているかのような行き過ぎた見方は誤りだ。

 「時価総額2兆円喪失」という見出しの記事も多数見受けられるが、実は株価の下落率は2割に過ぎない。むしろ、株価が直近1年で450%以上も上昇していることを考慮すると、目先の2割の調整は健全な値動きとも解釈できる。


“時価総額2兆円喪失”のセンセーショナルさとは裏腹に、悲壮感は全く漂っていない(出典:TradingView)

 ポップマートの2025年6月期上半期における売上高は約138億7630万元(約2866億円)に達し、前年同期比で204.4%増という驚異的な成長を記録した。純利益はさらに高い伸びを示し、前年同期比385.6%増の46億8000万元(約974億円)と、同社の収益力は加速している。

 この成長をけん引しているのが、ラブブを含む「THE MONSTERS」ブランドである。同IPの売り上げは48億元(約998億円)と、前年同期比で668.0%という爆発的な伸びを示し、今や全社売上の34.7%を占める収益の柱へと成長した。

 利益率が高い海外事業の売上高は、前年同期比で5倍以上に膨れ上がり、特に南北アメリカ大陸では同1142.3%増、欧州とその他地域でも同729.2%増と、売り上げの伸びは世界規模に及ぶ。

 これは、ラブブというIPが特定の文化圏に依存しない、普遍的な魅力を有していることを示している。

 また、中古市場の価格下落は人気の終焉(しゅうえん)ではなく、むしろ転売対策によって供給が安定し、転売ヤーの過剰収益がポップマートに移るという「正常化」のプロセスを踏んだと解釈するのが妥当だ。

 中国本土における登録会員数は、2025年上半期のわずか半年間で1304万人増加し、累計で5912万人に達した。同期間の売り上げのうち、実に91.2%が会員によるものであり、会員のリピート率は50.8%にも達しているという。これは、「一度つかんだ顧客を離さない」という、極めて強固なファン経済圏が確立されていることを意味している。

 さらに、同社はラブブという強力なキャッシュエンジンから生み出される潤沢な資金を、テーマパーク事業といった体験型の「コト消費」へと戦略的に再投資している。これは、短期的な物販ビジネスにとどまらず、IPの世界観を多角的に展開することで、長期的な顧客エンゲージメントを構築しようとする明確な意思の表れともいえる。

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