新人「議事録はAIにやらせました」何がダメなのか? 効率化の思わぬ落とし穴:「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)
新人がAIを駆使すれば効率化できる――はずだった。ところが現実は顧客の信頼を失う危険すらある。便利なはずのAIが、なぜ組織のリスクに転じてしまうのか。
基礎知識なきAI活用の危険性
AIとITを同じようなものだと受け止めている人はとても多い。
「IT技術やAIをうまく活用して、もっと生産性を上げてほしい」
などと経営者は発言するが、両者はまるで異なる。一緒くたにして捉えていると、むしろ効率の悪い仕事をすることになるだろう。
例えばITや機械は、間違った操作をすればエラーが出る。操作方法を知らなければ、そもそも動かすことができない。
ところがAIは違う。自然言語に対応しているため、誰でも簡単に指示・命令ができてしまう。そして何かしらの結果を出してくれる。
これが危険なのだ。基礎知識がない人でも、それらしい成果物を作れてしまう。しかし経験が十分でなければ、その成果物が正しいかどうか判断できない。
例えばタイのスープ料理「トムヤムクン」を作ってくれるAIがあったとしよう。しかし、たとえおいしいスープが生成されたとしても、トムヤムクンを知らない人が指示したのであれば、それが本物かどうかを検証できない。
新入社員にAIを使わせない大企業
ある大手IT企業の事例を紹介しよう。この企業では、新入社員にAIを使ったプログラミングを禁止している。なぜか?
生成されたコードが正しいか検証できないからだ。バグがあっても気付けない。セキュリティホールがあっても発見できない。結果として、品質の低いシステムが出来上がるのだ。
営業支援の現場では、こんなケースがあった。
ある企業が、AIを実装した営業支援システムを導入した。顧客データベースから情報を抽出し、最適な提案書まで生成してくれる便利なシステムだ。
結果はどうなったか。
学習データが偏っていたせいか、AIが顧客のニーズを正しく理解せず、的外れな提案書を作成してしまった。しかし新人の営業はAIを信じきった。顧客の正しい課題を理解せず、そのまま提案書を渡したのだ。
当然、顧客の反応は冷ややかだった。「我が社のことをまったく理解していない」と一蹴。信頼関係が崩壊してしまった。AIは便利なツールだ。しかし魔法のつえではない。
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