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「仕事は楽な方がいい」 ワイン一筋から「デジタル人材」に大変身 キリンDX道場でベテラン社員が学んだこと(2/4 ページ)

多くの企業がDX人材の育成に課題を抱えている中、キリンHDは2021年から、「DX道場」という独自プログラムを展開。受講者の中には、研究職出身ながら業務自動化ツールを使いこなし、具体的な成果を挙げた例も出ているという。同社に話を聞いた。

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段階別プログラムで育成 毎年進化するカリキュラム

 DX道場のプログラムは、受講者のスキルレベルに応じて段階別に構成している。基礎レベルではデジタル活用やデータサイエンスの基礎を学び、中級レベルではダッシュボードやAI、ノーコードアプリの活用を学ぶ。上級レベルは営業やサプライチェーンマネジメントなどテーマ別に展開する。

 各段階ではオンラインライブ講座を2〜3講座受講した後、認定試験に合格すると修了となる。必ずこの順番で受ける必要はなく、いきなり最上位レベルから受講することも可能だ。

 研修講師は基本的に外部の専門家に依頼している。複数の教育研修会社と連携し、内容に応じて適切な人材を選定する方式だ。「実践を重視した研修のため、講師はデジタルスキルに加えて、リーダーシップや推進力に関する実務経験があることを重視しています」(野々村氏)

 こうした講師陣のもと、カリキュラムの見直しも毎年行っているという。デジタル技術の進化に対応するだけでなく、受講者の反応や事業の状況を踏まえ、生成AI活用を推進する別チームとも連携して内容を決定。年度内でも前期・後期で変更することもあるそうだ。目まぐるしく変化する時代や技術の進歩に対応するため、未完成なものを改善していく柔軟な姿勢を取る一方、変革、リーダーシップ、実践という3つの軸は一貫して重視している。

実績が出るにつれ、リーダー層の意識も変化

 2025年、同社はDX道場の育成プログラムを大きく拡充した。拡充のポイントは3つある。

 1つ目は、受講しやすさの向上だ。eラーニングを追加し、応募の締め切りも年に数回から毎月応募可能な形式に変更した。「学びたい」と思った時にすぐ学べる環境を整え、実践につながりやすいタイミングで受講できるようにする狙いがある。

 2つ目は、実践重視の強化である。ツールの調達方法やプロジェクトマネジメント、関係者を巻き込むパートナーシップの構築など、デジタルスキル周辺の実践的な要素をカリキュラムに組み込んだ。時代の流れに合わせて、生成AI関連のコンテンツも追加している。

 3つ目は、受講者の直属リーダーを巻き込む仕組みだ。リーダーが1時間程度の研修を受講し、メンバーが何を学んでいるのかを把握した上で、1on1での効果的な関わり方を学ぶことをプログラムに追加した。

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2025年、キリンHDはDX道場の育成プログラムを大きく拡充

 こうした拡充の背景について、野々村氏は昨年まではリーダー層の研修へのモチベーションが課題だったと振り返る。しかし2025年5月、自社生成AIツール「BuddyAI」を国内従業員約1万5000人に導入するとともに、全リーダーに対してAI活用のマインドセット研修を実施したところ、状況が変わり始めた。

 「DX道場の受講者が企画したAI面接など、社内でDXを実装した事例が増えてきた結果、リーダーの意識にも変化が見られるようになりました。研修を受ける時間を業務負荷と考えるのか、成長する機会と捉えるのか。社内全体が後者の方向に意識が変わってきた実感があります」(野々村氏)。こうした取り組みの結果、2025年は約4900人の受講を見込んでおり、特に上級レベルは前年の3.9倍となる見通しだ。

 では、こうした育成プログラムを経て、実際にどのような成果が生まれているのだろうか。

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