2015年7月27日以前の記事
検索
インタビュー

「落とし物DX」で売上15億円 競合だったJR東日本も導入した「find」はどんなサービスなのか(3/3 ページ)

落とし物は誰にとっても身近なトラブルだが、その回収はアナログで非効率なままだった。そんな市場を15億円規模に成長させた「find」とはどんなサービスなのかというと……。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

廃棄される落とし物を活用できないか?

 落とし物市場で存在感を強め始めているfindだが、落とし主に落とし物を返すこと以外にも、面白い取り組みをしている。それが2月に実証実験を実施し、9月から開始した「findリユース」というサービスだ。

 和田氏はfindリユースを「3カ月間落とし主が現れなかった落とし物は『満期遺失物』となり、権利が警察から拾得先の施設に移ります。多くの施設ではお金を払って落とし物を廃棄しているのですが、その落とし物を回収してメルカリで販売し、収益の一部を施設側に還元するサービスです」と説明する。


findリユースの流れ(画像:findプレスリリースより)

 現在は週1回のペースで専門の業者が各商業施設を回り、メルカリで売れそうな落とし物を回収、find社がメルカリに出品するという流れで運営している。メルカリ販売ページのフォロワーは8776人(11月4日時点)で、実際に出品されていたアディダスのスニーカーには買い手がついていた。現状、回収した落とし物の中でメルカリで販売できるものは5〜10%程度だという。

 メルカリへの手数料や人件費などを踏まえるとまだまだ赤字とのことだが、和田氏は「リユースによって廃棄が減るため、落とし物の事業を展開している会社としては続けていきたいです。もちろんどこかで黒字転換はしたいですが」と話す。


ある百貨店が抱えていた廃棄する落とし物(画像:find提供)

 回収費用や人件費などコスト圧縮が難しいようにも感じるが、どのように黒字化を目指すのか。和田氏は「現在、findセンターという拠点づくりを進めています。警察署をはじめ、民間でも保管場所が足りていません。例えばホテルのバックヤードは落とし物でいっぱいで、スタッフさんは落とし物に囲まれながら仕事をしている。それらの回収から落とし主への配送、警察への手続きなどを一括で代行する拠点として運営していきます。そこの回収と保管の利用料を受け取ることで、今までリユースの回収にかけていた費用が売り上げとして計上されるという流れです」と説明する。

 稼働は2026年2〜3月を目指しており、稼働によって売り上げは倍になると和田氏は踏んでいる。


findセンターのイメージ(画像:find提供)

 「現在findは、落とし物DXサービスとしてソフトウェアツールのサブスクビジネスを展開しています。そこにfindセンターができることで、落とし物そのものの管理が追加されます。IT企業から正式に落とし物管理の会社になり、事業の幅が広がると感じています」(和田氏)

 これまでの落とし物は、探しても見つかる可能性が低かった。しかし、テクノロジーを用いて市場を切り開いていったfindによって、少しずつ落とし物が落とし主の手元に戻り始めている。落とし物を探す手間が削減され、誰かのうっかりが社会の循環につながる未来が少しずつ形になりつつある。


findの取締役COOの和田龍氏

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る