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AIを経営会議に“同席”させる 富士通が始めた、“意思決定を先送りさせない”方法とは?(1/3 ページ)

富士通は“人間レス”を前提とした業務オペレーションの再設計と、AIの恩恵を最大限に享受するための“AI-Ready”なデータ整備、そして組織文化の変革を目指している。

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 昨今、業務改革のためのAI活用を標榜(ひょうぼう)し、チャット型AIを導入する企業が増えている。その多くは、「人間がどのようにAIを活用したら、業務効率を高められるか」という問いを立てているのではないだろうか。

 だが富士通のAI活用が意味するものは、それとは根本的に異なる。

 「ITを強制的に変えることで、仕事の仕方、企業カルチャーまでがらりと変わる」──こう話すのは、富士通 執行役員専務 エンタープライズ事業 CEOの福田譲氏だ。同社は“人間レス”を前提とした業務オペレーションの再設計と、AIの恩恵を最大限に享受するための“AI-Ready”なデータ整備、そして組織文化の変革を目指している。

 Sansanが提供する個人向け名刺サービスEightが主催した「AI-PAX(アイパックス)2025 第1回 AIの実践的な活用展」で、福田氏が講演した「富士通の変革プロジェクト『フジトラ』に学ぶ、AIファーストの作り方」の内容をもとに、AIファーストな組織づくりについて考えていく。

年に134万時間の業務削減 富士通流AI活用

 福田氏は、2020年4月から2025年3月末まで、CDXO(最高デジタル変革責任者)として富士通の変革プロジェクト「フジトラ」(Fujitsu Transformation)をけん引してきた。フジトラとは、富士通が描く理想の姿と現在の姿とのギャップを埋めるために、顧客・従業員・経営・業務の4つを変革してAIドリブンな経営を実現しようというものだ。

 こう書くと、なんだかふわっとした概念を語っているだけのようだが、決してそんなことはない。福田氏はITを、漫画『巨人の星』に登場した、日常的に着用することで筋力を鍛える架空のトレーニング器具“大リーグ養成ギプス”にたとえ、その本気度を次のように語った。

 「みなさん、朝、PCが立ち上がらなければ、『これでは仕事にならない!』と大騒ぎになるでしょう? これはつまり、仕事はITによってデザインされているということ。逆に言えば、ITを強制的に変えることで、仕事の仕方が変わり、スキルやマインドセットも変わり、企業のカルチャーまで変わっていく。ITはいわば“大リーグ養成ギプス”なのだ。大リーグ養成ギプスをつけるように、強制的にITを変えることで自らを変えていく。この考え方で、富士通ではDXに取り組んでいる」(福田氏)


富士通 執行役員専務 エンタープライズ事業 CEOの福田譲氏(提供:Sansan)

 富士通ではグローバルのグループ全体で共通した生成AIプラットフォームを導入。チャットで手軽に使うような簡単なものから、業務用アプリケーションに組み込まれた本格的な活用まで、全て同じ基盤上で運用している。その総利用回数は1日に約38万回。AIによって効率化した時間は年に134万時間に及ぶというが、福田氏はこれに満足しない。

 「AIと言ってもチャットアプリケーションの活用が依然として多く、その効果には限界がある。本当の意味でAIの力を引き出すには、本業であるITソリューションサービスの約5000件のプロジェクトにAIを組み込み、人間が担っていた作業をAIが代替したり、人間の能力を超えるパフォーマンスを発揮したりする必要がある」と語り、「富士通ではすでに5000人以上の開発者がGitHub Copilotを活用しながら、あらゆる開発工程におけるAI実装に挑んでいる」と明かした。

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